JFEスチールは、製銑・製鋼から鋼材の生産までを一貫して行う高炉メーカーとして世界屈指の事業規模を誇る。2003年に川崎製鉄と日本鋼管が事業を統合し、国内の鉄鋼業界再編に先鞭をつけた。また、近年は中国・タイ・インドなどアジア圏を中心に海外事業を積極的に推進し、急成長する市場においてビジネスの拡大を図っている。JFEスチール IT改革推進部 基盤グループリーダーの星加氏は、自社の強みを次のように紹介する。
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JFEスチール株式会社
IT改革推進部
基盤グループリーダー
主任部員(部長)
星加 理 氏
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「JFEスチールは、西日本(倉敷・福山)と東日本(千葉・京浜)および知多の計5地区の製鉄所・製造所を有し、銑鋼一貫メーカーとして世界トップクラスの技術力でお客様のニーズにお応えしています。自社開発の製鉄技術、そして独自のノウハウを注ぎ込んだ製販一体のビジネスプロセスが私たちの強みと言えるでしょう」
IT改革推進部のミッションは、その強みを存分に発揮できるIT環境を整備することにある。販売と生産計画の同期を図る基幹システム、業務系・経営管理系アプリケーション、システムインフラに至るまでその守備範囲は幅広い。2012年時点で、自社開発のアプリケーションはおよそ200系統。ユーザー数においてはJFEスチール社員1万4千人をはじめ、グループ企業、取引先企業を含むと6万人にも及ぶ。
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JFEスチール株式会社
IT改革推進部
主任部員(課長)
酒田 健 氏
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「Webアプリケーションの利用が本格化した1990年代後半に、全社における情報セキュリティへの取組みの一環として、複数のアプリケーションを横断的に活用できるシングルサインオンシステムを構築しました。この認証システムは、現在に至るまでITサービスの利用環境の入口を支え続けています」と同JFEスチール IT改革推進部 酒田氏は話す。
しかし、従来の認証システムの構築から既に10年以上が経過し、いくつかの課題が顕在化してきたという。
「たとえば特定のアプリケーションにおいて、ユーザーがログインして使い始めるまでに何度もIDとパスワードを入力しなければならない状況になっていました。取引先となるお客様企業にお使いいただくシステムにおいても同様の問題が発生しており、早急な解決を必要としていました」(星加氏)
JFEスチールグループのシステムインテグレーターであり、高信頼なシステム構築で実績豊富なJFEシステムズ。その東京事業所 技術部 サーバー基盤グループに所属し、本プロジェクトに参加した川上氏はシステム側の視点から次のように話す。
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JFEシステムズ株式会社
東京事業所 技術部
サーバー基盤グループ
ITアーキテクト
川上 博之 氏
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「新規のパッケージアプリケーションの導入に際して、従来の認証システムとのID/パスワード連携が難しいケースが増えていました。アプリケーションベンダー側にシングルサインオンに対応するための実装を依頼すると多大なコストがかかりますし、一方で、認証機能を内製するとすれば、その実装に膨大な時間と工数を費やすことになるというジレンマがありました」
決定的だったのは、パブリッククラウドサービスを採用するにあたり、従来の認証システムとの認証連携(フェデレーション)が行えないという問題だった。
「パブリッククラウド上のアプリケーションを利用するユーザーは、都度IDとパスワードを入力し直さなければならず、シングルサインオンの仕組みそのものが崩れてしまう可能性がありました」(川上氏)
これらの課題を解決するべく従来の認証基盤の構想段階から開発にまで関わった川上氏自らが検討開始を起案。それを受けて星加氏・酒田氏を中心とするプロジェクトを立ち上げ、2010年8月に新しい統合認証基盤の検討に着手。およそ1年半の検討を経て2012年2月、「IceWall SSO」の採用を決定した。
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