HPEの省エネルギーアセスメントサービスを採用
基幹インフラ系若手担当者を中心とする改善活動により、データセンター改革は2011年までに当初の目標を達成しつつあった。だが、この時点でプロジェクトはすでに次のフェーズに突入していたという。JTBグループのプライベートクラウド環境の構築とJTB基幹システムのインフラ統合が同時進行していたのだ。これと歩調を合わせ、データセンターファシリティを見直すことは必須だった。
「500台近くある物理サーバーを仮想化・統合化し、70台程度に集約するという一大プロジェクトが進められていました。設置スペースが縮小する一方、サーバーが高密度化することで、ハードウェア設置エリアの発熱量が大幅に増加します。従来よりも冷却効率を高める必要に迫られたのです」(程田氏)
しかし、これまで以上の電力を使って冷却することは許されない。大型のメインフレームを撤去してオープン系に移行した後、フロアには空きスペースも目立っていた。
「最小限の電力でもっと効率的に冷却できる、エネルギー効率に優れたデータセンターファシリティを実現できないか」――程田氏と山本氏は広く情報収集を行った。そして出会ったのがHPEの「HPEクリティカルファシリティサービス」だった。
このHPE独自のコンサルティングサービスは、データセンター設備機器を調査し、電力や空調機器の能力、その使用状況などを詳しく分析。さらに、データセンターの空調/冷却能力を調査・解析し、省エネルギー化の可能性の考察と改善提案を行うものだ。
似たようなサービスを提供するベンダーは複数あったが、程田氏らがHPEの採用を決めたのには大きな理由があった。 「建築設備系のベンダーは建物構造や設備能力などを重視した提案になりがちで、ITシステム系のベンダーはキロワットあたりの性能に優れた製品の提案はできてもファシリティ側には弱い。そうした印象でしたが、HPEはファシリティのプロとITシステムのプロによるチーム編成で、トータルな視点からの合理的な提案が期待できると考えました」(山本氏)
「最終的には、HPEの『事前アセスメント』を活用してレポートを受け取り、本番サービスの実効性に確信が持てました。改善の指針に加え、それを実施した際の想定できる効果予測まで示してくれました。これが非常に大きかったと言えます」(程田氏)
HPEによる事前アセスメントの結果は、程田氏らが事前に予想していた改善ポイントを裏づけるものだったという。
HPEクリティカルファシリティサービスは、上図のように大きく4つのフェーズで提供される。それぞれのフェーズは個別のサービスとしても利用可能だ。今回JTB情報システムが採用したのは、「クリティカルファシリティアシュアランス(CFA)」に含まれる「データセンター省エネルギーアセスメントサービス」。既存のファシリティの運用効率を最適化するためのアセスメントサービスである。
HPEは、世界85カ所にあったデータセンターを3地域6サイトに統合した経験がある。この一大プロジェクトを経て、HPEはデータセンター革新の膨大なナレッジを蓄積。これが他社に真似のできないサービスの源泉となっている。
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