日本ヒューレット・パッカードが、次期サービス基盤の中期ロードマップ策定・設計・検証をトータルに支援
IoTやビッグデータ、いわゆるデジタルビジネス時代に応える新しいサービス基盤の実現に向けて、着実に準備を進めていきます。今後はより高度なビジネス目標へのチャレンジになるはずです
-ソネット株式会社 システム技術部門 プラットフォーム部 部長
田代 修 氏
インターネットサービスプロバイダー大手のソネットが、次期サービス基盤の検討に着手した。コンテンツのリッチ化やモバイルインターネットが進展する中、その先のIoT(Internet of Things)時代を見据えてソネットが描いたのは、更なる「スピード」と「経済性」を追求するための「ハイブリッドクラウド型サービス基盤」である。日本ヒューレット・パッカードのコンサルティングチームが、この次期サービス基盤の中期ロードマップ策定・設計・検証をトータルに支援した。
業界
- 情報・通信
目的
- インターネットサービスプロバイダー事業を支えるサービス基盤のハイブリッドクラウド化に向けた技術検証。更なる「スピード」と「経済性」を追求するための、次期サービス基盤の主要技術を確立する。
アプローチ
- VMwareおよびOpenStackによるオンプレミスのクラウド基盤と、CloudStackによるパブリッククラウド環境に対して、単一のサービスポータルからユーザーがセルフサービスで仮想サーバー環境を自動的に構築可能にする。
ITの効果
- VMwareおよびOpenStack、CloudStackの3つの環境に対し「同一イメージの仮想マシンのデプロイ」を可能に
- HPE Cloud Service Automation(CSA)によるセルフサービスポータルから数分でのサーバー環境立ち上げを実現
- HPE Operations Orchestration(OO)がサーバー環境構築の手順を自動的に実行
ビジネスの効果
- ハイブリッドクラウドによるISPサービス基盤実現に向けた重要な技術を確立
- アプリケーション開発チームのニーズに迅速に応えるセルフサービス化を可能に
- 日本ヒューレット・パッカード(HPE)が次期サービス基盤の実現に向けたロードマップをトータルに支援
チャレンジ
会員数234万を達成し国内シェア3位に
ソネットは、1996年にインターネット接続サービスを開始して以来、常に日本におけるインターネット普及の一翼を担ってきた。2013年に開始したFTTHサービス「NURO(ニューロ)光」では、下り最大2Gbpsという超高速通信を実現。音楽や動画、ゲームなどのリッチコンテンツを快適に楽しめるサービスとして広く支持を獲得している。2015年9月、ソネットのFTTH会員数は234万人を突破し、国内シェア3位*のポジションを占めるまでに成長した。システム技術部門 プラットフォーム部を率いる田代修氏は、自らのチームの取り組みを次のように話す。
「ソネットは、お陰様で2016年にサービス開始20周年を迎えました。私たちは、コンテンツのリッチ化やモバイルインターネットの進展を先取りする形でサービスを拡充し、それを支えるサービス基盤を進化させてきました。そして現在、様々な機器がインターネットにつながるIoT(Internet of Things)時代を見据えた、次期サービス基盤の具体化に取り組んでいます」
インターネットは、ビジネスや暮らしを支えるライフライン/社会インフラとして欠かせない存在となった。一方で、国内ISP市場における顧客の獲得競争は激しさを増している。ソネットがシェアを伸ばしている理由はどこにあるのか。
「快適なお客様体験を支える高品質な通信サービス、付加価値の高いサービスやコンテンツ開発を継続的にご提供してきた成果と考えています。私たちプラットフォーム部は、新しいサービスをよりスピーディに展開可能で、かつ安定した運用が可能なサービス基盤を提供していく必要があります」(田代氏)
プラットフォーム部では、2010年にスタートさせた「プラットフォーム全体最適化プロジェクト」においてサービス基盤を大きく見直した。プラットフォームの標準化と運用のシンプル化を大胆に進めた結果、システムの問題発生を大幅に削減しサービス品質を高めることに成功している。
「サービス品質向上への取り組みは、ビジネス要求への適応スピードを高め、コスト削減にも大きく寄与しました。しかしプロジェクト完了から2年が経過した今、新サービスの開発・テスト環境を中心に、私たちの想定を超えるほど『スピード』への要求が高まっています。コストを抑えながら、いかにリソース提供を迅速化するか、新しいチャレンジが求められていました」と田代氏は話す。
この課題に応えたのが、日本ヒューレット・パッカード(HPE)のコンサルティングチームである。ソネットの次期サービス基盤はどうあるべきか。実現に向けてどんな課題を解決すべきか。意見を交換しながら新しいプロジェクトに着手した。「サービス基盤のハイブリッドクラウド化」に向けた技術検証である。
*MM総研調べ(2015年12月)
ソネット株式会社
システム技術部門
プラットフォーム部
部長
田代 修 氏
ソネット株式会社
システム技術部門
プラットフォーム部
インフラオペレーション課
課長
松本 泰史 氏
ソネット株式会社
システム技術部門
プラットフォーム部
インフラオペレーション課
三條 宣隆 氏
ソリューション
ハイブリッドクラウド化による更なるスピードの獲得
「どれだけ早くビジネスに参入できるか、新しいサービスを提供できるかが成否を分けます。オンプレミスに固執することなく、ビジネス要求に応えるスピードを獲得するかを徹底的に議論した末、私たちが導き出した結論が『ハイブリッドクラウド』でした」(田代氏)
ビジネス要求に応えるスピード化に、ハイブリッドクラウド化がどのような解決をもたらすのだろうか。システム技術部門 プラットフォーム部 インフラオペレーション課 課長の松本泰史氏は、次のように説明する。
「仮想化技術の導入以降、サーバー環境のセットアップ時間は大幅に短縮されました。現在ではユーザーからの要求に数時間以内で応えることが可能です。しかし、オンプレミスの環境ではリソースプールを超える想定以上の要求には応えられないため、ハードウエアの増強が必要になります。そうした場合、新しい機器の調達から物理環境の構築まで人手を介して行わなければなりません。これにはどうしても2-3ヶ月を要します」
新サービスの開発・テスト環境の構築は何よりスピードが優先される。プロジェクトの規模により要求リソースの量は様々で、追加要求もあればプロジェクトの縮小・終了に伴う返却もある。
「テストやサービスの試作など『使いきりの環境』を用意するために、オンプレミスのリソースを使うのは経済的ではありません。そこで、パブリッククラウドを組み合わせ、オンプレミスを補完する形でオンデマンドにリソースを調達する方法を検討しました。課題は『異なる環境の運用を1つの方法に統合する』ことでした」(松本氏)
パブリッククラウドそのものの採用は容易だ。しかし、「標準化を達成した現在のサービス基盤の運用を、再び複雑化させてはならない」と松本氏らは考えた。
また、開発・テスト・本番それぞれのOSイメージを標準化することで、アプリケーションの稼動を担保するとともに脆弱性などの解決にも統一的に対応してきた経緯もある。システム技術部門 プラットフォーム部 インフラオペレーション課の三條宣隆氏は、次のように話す。
「オンプレミス環境を構成するVMwareとOpenStack、パブリッククラウドのCloudStack―この3つの環境を統合的に運用しつつ、すべての環境で同一仕様・同一バージョンの仮想マシンやOSが自動的にセットアップされる仕組みを検討しました。そして、『異なる環境で透過的にリソースを利用できるようにする』ことを目指したのです」
日本ヒューレット・パッカード(HPE)のコンサルティングチームは、ソネットの次期サービス基盤のあるべき姿を具体的に描きつつ、オンプレミスとクラウドの異なる環境の運用を1つの方法に統合し、かつ透過的にリソースを利用可能にする方法を検討していった。
日本ヒューレット・パッカード
テクノロジーコンサルティング
事業統括
ソリューションビジネス推進
統括本部
インフラストラクチャソリューション部
シニアコンサルタント
大正 隆雄 氏
日本ヒューレット・パッカード
テクノロジーコンサルティング
事業統括
トランスフォーメーション・
コンサルティング本部
テクノロジーアーキテクト部
惣道 哲也 氏
3環境に対し同一のOSイメージを自動展開
現在、ソネットのサービス基盤の中心を占めるのはVMwareによる仮想サーバー環境である。この仮想化基盤上に、固有の設定を組み込んだソネット標準のOSイメージを自動的に展開する方法を確立している。まず解決すべきは、「異なる環境に対して同一イメージの仮想マシンを正しくデプロイすること」だった。検証環境の設計と構築を担当したのは、日本ヒューレット・パッカード テクノロジーコンサルティング事業統括 トランスフォーメーション・コンサルティング本部の惣道哲也氏である。
「今回はオープンソースツールのpackerを利用して、単一のOSイメージからVMwareとOpenStack、CloudStackそれぞれに対応するイメージを自動的に作成する仕組みを構築しました。ソネット様固有の設定を、イメージフォーマットの異なる3つの環境向けに正しくビルドするための作り込みがポイントです。このイメージをもとに、オーケストレーションツールHPE Operations Orchestration(HPE OO)を利用して各環境に仮想マシンをデプロイする環境を導入しました。これにより、3つのいずれの環境に対しても数分で仮想マシンのデプロイを完了できるようになりました。もちろん、必要に応じて環境を消去することもできます」(惣道氏)
現在の手順では、ユーザー部門の依頼を受けてからシステム技術部門のスタッフがサーバー環境を構築している。デプロイに必要な実質的な時間が数分単位でも、人手を介する以上タイムラグの発生は避けられない。
“実績ある商用ソフトウェアベースの環境、低コストのオープンソース環境、そしてパブリッククラウド。これらを適材適所で自由に使い分けることが可能になりました。必要なリソースをいかに迅速に提供するかという課題だけでなく、捨てることになるかもしれないリソースをいかに合理的に用意するか、という課題も解決できると考えています。将来、4つ目、5つ目のクラウドリソースを利用するに際しても、今回確立した技術と手順がそのまま活かせます” |
「一般的な要求は、数時間でリソース切出し、24時間以内に環境を提供することが目標です。今回、セルフサービスポータルを構築したことで、ユーザー自身が必要なとき数分以内でセットアップできることが確認できました」(三條氏)
セルフサービスポータルは、HPE Cloud Service Automation(HPE CSA)によって構築された。HPE CSA とHPE OOは、ソネットがすでに運用しているコンバージドインフラ製品「HPE CloudSystem Matrix」のアップデートにより合理的に導入されたという。
ベネフィット
より高度なビジネス目標へのチャレンジ
今回のプロジェクトにより、VMwareとOpenStack、CloudStackという異なるクラウド環境の運用を1つの方法に統合するとともに、セルフサービスポータルからそれぞれのリソースを透過的に利用可能にする技術と手順が確立された。
「実績ある商用ソフトウェアベースの環境、低コストのオープンソース環境、そしてパブリッククラウド。これらを適材適所で自由に使い分けることが可能になりました。必要なリソースをいかに迅速に提供するかという課題だけでなく、捨てることになるかもしれないリソースをいかに合理的に用意するか、という課題も解決できると考えています。将来、4つ目、5つ目のクラウドリソースを利用するに際しても、今回確立した技術と手順がそのまま活かせます」と松本氏は評価する。
また、日本ヒューレット・パッカード株式会社 テクノロジーコンサルティング事業統括 シニアコンサルタントの大正隆雄氏は、次のように語る。「ソネット様には『3ヵ年ロードマップ』をご提示しています。本プロジェクトにより、最初の目標である『ハイブリットクラウドにおける統合的なポータル制御』と『プロビジョニング自動化のフレームワーク確立』までが実現されました。現在、次のステップに向けて準備を進めています」
「次のステップでは、複数のクラウド環境の横断的な連携を強化していく考えです。そのためには、ネットワークやバックアップの仕組みも透過的に扱えるようにすることが求められます。日本ヒューレット・パッカードには、今後のサービス化に向けたサポートやアドバイスを期待しています」(三條氏)
ソネットは、新しい時代のニーズを先取りした顧客価値の高いサービスを提案し続けてきた。これを持続させるために、次期サービス基盤の実現に向けた準備は着実に進んでいる。田代氏が次のように締めくくった。
「IoTやビッグデータ、いわゆるデジタルビジネス時代に応える新しいサービス基盤の実現に向けて、着実に準備を進めていきます。スピードと経済性の追求が今回のプロジェクトテーマでしたが、今後はより高度なビジネス目標へのチャレンジになるはずです。日本ヒューレット・パッカードには、私たちのビジョンへの深い理解とともに、それを実現するためのプランの具体化、最新のテクノロジーを組み合わせたサービス基盤の強化に、今後も貢献してもらえることを期待します」
詳しい情報
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www.hpe.com/jp/services
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