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OpenVMS マニュアル


HP OpenVMS
OpenVMS Cluster システム


目次 索引

付録F NISCA プロトコルのトラブルシューティング

NISCA は,イーサネット LAN を介して,クラスタ内の他のノードにディスク I/O やロック・メッセージなどのメッセージを伝達するトランスポート・プロトコルです。NISCA という頭字語は, SCA (System Communications Architecture) に従ってイーサネット・ネットワーク・インターコネクト (NI) を実装しているプロトコルのことを示しています。

OpenVMS ソフトウェア・インタフェースは,NISCA プロトコルを使用して,CI ポート・インタフェースをエミュレートします。つまり,データが LAN あるいは IP ネットワークを介して転送されることを除けば,ソフトウェア・インタフェースは CI バスのインタフェースと同じです。 NISCA プロトコルを使用することにより,OpenVMS Cluster は特殊なハードウェアを必要とせずに,LAN あるいは IP ネットワーク上で通信を行うことができます。

ここでは,NISCA トランスポート・プロトコルについて説明し,ネットワーク・マネージャがネットワーク関連の問題を突き止めるのに役立つトラブルシューティングの手法についても示します。LAN で発生したハードウェア・コンポーネント障害のトラブルシューティングは, LAN アナライザを使用して行うのが最適なので,この付録では, LAN 分析ツールの機能と設定についても説明します。

  注意
改訂した PEDRIVER 固有のトラブルシューティングの追加情報については,本書の次の改訂版に記載される予定です。



NISCA プロトコルは,SCA の PPD (Port-to-Port Driver) プロトコルを実装したものです。

F.1.1 SCA プロトコル

第 2 章 で説明したように,SCA は,下位レベルの分散アプリケーション (たとえばデバイス・ドライバ,ファイル・サービス,ネットワーク・マネージャ) に効率のよい通信サービスを提供するソフトウェア・アーキテクチャです。

SCA では,SYSAP (System Applications), SCS (System Communications Services),PPD (Port-to-Port Driver),デバイス・ドライバと LAN アダプタの PI (Physical Interconnect: 物理インターコネクト) も含めて, OpenVMS Cluster システム用に多くのプロトコルが指定されています。 図 F-1 では,SCA アーキテクチャを構成する相互に依存するレベルとして,これらのプロトコルを示しています。 図 F-1 では, NISCA プロトコルは,SCA アーキテクチャの PPD レイヤの特定の実装として示されています。

図 F-1 SCA アーキテクチャのプロトコル


表 F-1 は, 図 F-1 に示した SCA プロトコルの各レベルについて説明しています。

表 F-1 SCA プロトコル・レイヤ
プロトコル 説明
SYSAP 各ノードで実行されるクラスタ単位のシステム・アプリケーションを表す。これらのシステム・アプリケーションは,ノード間でメッセージを送信するために通信パスを共用する。システム・アプリケーションの例として,ディスク・クラス・ドライバ (DUDRIVER など), MSCP サーバ,接続マネージャなどがある。
SCS OpenVMS Cluster を中心とした接続を管理し, 仮想サーキットと呼ばれる共通のトランスポートを介して,システム・アプリケーション間のメッセージを多重化する ( 付録 F.1.2 項 を参照)。また,SCS レイヤは,接続で障害が発生したときに,個々のシステム・アプリケーションが適切に応答できるように,各アプリケーションに通知を出す。たとえば, SCS からの通知によって DUDRIVER が起動されてディスクがフェールオーバされたり,クラスタの状態遷移が開始されたりする。 SCS はまた,再接続間隔 (RECNXINTERVAL) の時間のカウントを開始するように,接続マネージャに通知する。
PPD OpenVMS Cluster システム内の他のノードにメッセージ配布サービスを提供する。

PPD レベル 説明
PPD (Port-to-Port Driver) 仮想サーキットを確立し,エラーを処理する。
PPC (Port-to-Port Communication) ポート間通信,データグラム,シーケンス・メッセージ,ブロック転送を提供する。"セグメント化"も PPC レベルで行われる。LAN での大きなデータ・ブロックのセグメント化は, CI バスや DSSI バスとは異なる方法で行われる。 LAN データ・パケットは,以下に示すように,特定の LAN 通信パスで認められているサイズに従って断片化される。

ポート間通信 認められるパケット・サイズ
Ethernet-to-Ethernet 1498 バイト
Gb Ethernet-to-Gb Ethernet 最大 8192 バイト
Gb Ethernet-to-10Gb Ethernet 最大 8192 バイト
10Gb Ethernet-to-10Gb Ethernet 最大 8192 バイト
注意: デフォルト値は,イーサネットの場合も FDDIの場合も 1498 バイトである。

TR (Transport) ノード間に,仮想サーキットというエラーのないパスを提供する ( 付録 F.1.2 項 を参照)。PPC レベルでは,クラスタ内の 2 つのノード間でシーケンス・メッセージとデータグラムを転送するために,仮想サーキットが使用される。
Channel Control (CC) OpenVMS Cluster 内で,ノード間のネットワーク・パス (チャネルと呼ぶ) を管理する。CC レベルでは,ノード間で HELLO データグラム・メッセージを送信することによりチャネルを管理する。ノードは,まだ機能していることを
DX (Datagram Exchange) LAN ドライバへのインタフェース。

PI LAN デバイスへの接続を提供する。PI は,パケットが送受信されるときに使用される LAN ドライバとアダプタを表す。

PI コンポーネント 説明
LAN ドライバ NISCA および他の多くのクライアント (DECnet,TCP/IP,LAT, LAD/LAST など) を多重化し,イーサネットおよび FDDI ネットワーク・インタフェース上でデータグラム・サービスを提供する。
LAN アダプタ LAN ネットワーク・ドライバとアダプタ・ハードウェアで構成される。

図 F-2 は, SCA アーキテクチャの TCP/IP レイヤの特定の実装としての NISCA プロトコルについて示しています。

図 F-2 Cluster over IP のための SCA アーキテクチャにおけるプロトコル


表 F-2 は, 図 F-2 に示した SCA プロトコルのレベルについて説明しています。

表 F-2 Cluster over IP のための SCA プロトコル・レイヤ
プロトコル 説明
SYSAP 各ノードで実行されるクラスタ単位のシステム・アプリケーションを表す。これらのシステム・アプリケーションは,ノード間でメッセージを送信するために通信パスを共用する。システム・アプリケーションの例として,ディスク・クラス・ドライバ (DUDRIVER など), MSCP サーバ,接続マネージャなどがある。
SCS OpenVMS Cluster を中心とした接続を管理し, 仮想サーキットと呼ばれる共通のトランスポートを介して,システム・アプリケーション間のメッセージを多重化する ( 付録 F.1.2 項 を参照)。また,SCS レイヤは,接続で障害が発生したときに,個々のシステム・アプリケーションが適切に応答できるように,各アプリケーションに通知を出す。たとえば, SCS からの通知によって DUDRIVER が起動されてディスクがフェールオーバされたり,クラスタの状態遷移が開始されたりする。 SCS はまた,再接続間隔 (RECNXINTERVAL) の時間のカウントを開始するように,接続マネージャに通知する。
PPD OpenVMS Cluster システム内の他のノードにメッセージ配布サービスを提供する。

PPD レベル 説明
PPD (Port-to-Port Driver) 仮想サーキットを確立し,エラーを処理する。
PPC (Port-to-Port Communication) ポート間通信,データグラム,シーケンス・メッセージ,ブロック転送を提供する。"セグメント化"も PPC レベルで行われる。LAN での大きなデータ・ブロックのセグメント化は, CI バスや DSSI バスとは異なる方法で行われる。 LAN データ・パケットは,以下に示すように,特定の LAN 通信パスで認められているサイズに従って断片化される。

ポート間通信 認められるパケット・サイズ
Ethernet-to-Ethernet 1498 バイト
Gb Ethernet-to-Gb Ethernet 最大 8192 バイト
Gb Ethernet-to-10Gb Ethernet 最大 8192 バイト
10Gb Ethernet-to-10Gb Ethernet 最大 8192 バイト
注意: デフォルト値は,イーサネットの場合も FDDIの場合も 1498 バイトである。

TR (Transport) ノード間に,仮想サーキットというエラーのないパスを提供する ( 付録 F.1.2 項 を参照)。PPC レベルでは,クラスタ内の 2 つのノード間でシーケンス・メッセージとデータグラムを転送するために,仮想サーキットが使用される。
Channel Control (CC) OpenVMS Cluster 内で,ノード間のネットワーク・パス (チャネルと呼ぶ) を管理する。CC レベルでは,ノード間で HELLO データグラム・メッセージを送信することによりチャネルを管理する。ノードは,まだ機能していることを示すために,HELLO データグラム・メッセージを送信する。 TR レベルでは,仮想サーキット・トラフィックを伝達するためにチャネルを使用する。
IP Header Exchange TCP/IP スタックへのインタフェース

TCP/IP Cluster over IP ではクラスタ通信に UDP を使用する。
PI LAN デバイスへの接続を提供する。PI は,パケットが送受信されるときに使用される LAN ドライバとアダプタを表す。

PI コンポーネント 説明
LAN ドライバ NISCA および他の多くのクライアント (DECnet,TCP/IP,LAT, LAD/LAST など) を多重化し,イーサネットおよび FDDI ネットワーク・インタフェース上でデータグラム・サービスを提供する。
LAN アダプタ LAN ネットワーク・ドライバとアダプタ・ハードウェアで構成される。



F.1.2 通信のために使用されるパス

NISCA プロトコルは, 表 F-3 で説明しているパス上の通信を制御します。

表 F-3 通信パス
パス 説明
仮想サーキット 以下の目的で,OpenVMS Cluster 内のノード間の信頼性の高いポート間通信を提供する共通のトランスポート。

  • 重複や紛失を発生させずに,メッセージを確実に配布する。各ポートは他の各リモート・ポートとの間で仮想サーキットを維持する。

  • メッセージの順序を確保する。各仮想サーキット・シーケンス番号が個々のパケットで使用される。各送信メッセージはシーケンス番号を転送するため,重複するメッセージは破棄される。

各ポートの仮想サーキット記述子テーブルは,そのポート間サーキットの状態を示す。2 つのポート間に仮想サーキットが作成された後,ノード内の SYSAP 間で通信を確立することができる。

チャネル 異なるノードにある 2 つの LAN アダプタ間の論理通信パス。ノード間のチャネルは,2 つ 1 組のアダプタとそれを接続するネットワークによって決定される。たとえば,それぞれ 2 つのアダプタを装備している 2 つのノードは,4 つのチャネルを確立することができる。特定の仮想サーキットによって伝達されたメッセージは,2 つのノードを接続するどのチャネルを介しても送信できる。

注意: チャネルと仮想サーキットの相違は,チャネルがデータグラム・サービスのためのパスを提供できるという点にあります。仮想サーキットはチャネルの上の層にあり,ノード間にエラーのないパスを提供します。OpenVMS Cluster では,ノード間に複数のチャネルが存在できますが,仮想サーキットは同時に 2 つのノード間に 1 つしか存在できません。

F.1.3 PEDRIVER

ポート・エミュレータ・ドライバである PEDRIVER は, NISCA プロトコルを実装し,ローカル LAN ポートとリモート LAN ポートの間の通信のためのチャネルを確立し,制御します。

PEDRIVER は,メッセージが順に配布されることを保証するパケット配布サービス (NISCA プロトコルの TR レベル) を実装します。特定の仮想サーキットによって伝達されるメッセージは,2 つのノードを接続するどのチャネルを通じても送信できます。チャネルの選択は,メッセージの送信側 (PEDRIVER) によって決定されます。メッセージを送信するノードは,どのチャネルも選択できるため,受信側の PEDRIVER は,どのチャネルからでもメッセージを受信できる準備をしておかなければなりません。

どの時点でも,TR レベルは特定の仮想サーキットのトラフィックを伝達するために,1 つの "優先チャネル" を使用します。

OpenVMS Version 8.3 以上では, PEDRIVER は以下の機能をサポートします。

  • データ圧縮

  • マルチギガビット・ラインスピードと長距離性能スケーリング

データ圧縮は, 2 つの OpenVMS ノード間のデータ伝送レートが LAN スピードによる制約を受けており,利用できるアイドル CPU 能力がある場合に,データ伝送時間を短縮するために使用できます。たとえば,シャドウ・コピーの時間を短縮したり, E3 や DS3,FDDI, あるいは 100Mb Ethernet などの比較的低速度のリンクで接続されているディザスタトレラント・サイト間の MSCP の性能を改善するのに利用できます。 PEdriver データ圧縮は, SCACP,Availability Manager,あるいは NISCS_PORT_SERV システム・パラメータの使用により有効にできます。

ノード間の伝送におけるパケット数は, LAN リンクの速度とノード間の距離の両方に対して比例的に増加する必要があります。従来,PEdriver は,送信および受信ウィンドウ・サイズ (バッファリング容量) が 31 の発信パケットに固定されていました。 OpenVMS Version 8.3 以降,PEdriver は,ノード間のクラスタ通信に使用されるローカルおよびリモートの LAN アダプタの現在の処理速度をもとに送信および受信ウィンドウ・サイズ (他のネットワーク・プロトコルではパイプ・クォータとも呼ばれる) を自動的に選択します。 SCACP と Availability Manager は,自動選択されたウィンドウサイズを変更するための管理機能を提供します。

詳細は,『HP OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』および『HP OpenVMS Availability Manager User's Guide』の SCACP ユーティリティの章および NISCS_PORT_SERV の説明を参照してください。

関連項目: 転送チャネルの選択方法については, 付録 G を参照してください。


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