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HP OpenVMS: V8.3 インストレーション・ガイド

第4章 OpenVMS オペレーティング・システムをアップグレードするための準備

≫ 

OpenVMS V8.3 ライブラリ

目次
まえがき
第 1 章:はじめに
第 2 章:クラスタ環境でのインストールの準備
第 3 章:インストール手順
第 4 章:アップグレードの準備作業
第 5 章:クラスタ環境でのアップグレードの準備作業
第 6 章:アップグレード手順
第 7 章:インストールおよびアップグレード後の作業
付録 A:Alphaシステムのブートとシャットダウン
付録 B:I64システムのブートとシャットダウン
付録 C:ネットワーク・ブート
付録 D:Fibre Channelストレージデバイス
付録 E:システムディスクのバックアップとリストア
付録 F:国際化キットのインストール
付録 G:Management Station
付録 H:オペレーティングシステムの削除
付録 I:システムディスクの初期化
用語集
索引
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目次

4.1 アップグレード前の準備作業
4.2 システムをアップグレードする前に内容を確認すべきドキュメント
4.3 注意,警告,および制約
4.3.1 アップグレード・パス
4.3.2 アップデート・ライセンスの要件
4.3.3 インストールしないコンポーネントの選択
4.3.4 ライセンスとレイヤード・プロダクト
4.4 手作業で削除しなければならないソフトウェア
4.4.1 古いバージョンの DECram for OpenVMS の削除 (Alpha のみ)
4.4.2 TDC V2.0 の削除 (Alpha のみ)
4.5 アップグレードによる削除からファイルを保護する
4.5.1 アーカイブ・ファイルの保護
4.5.2 SYS$EFI.SYS ブート・パーティションで追加/変更されたファイルの保護 (OpenVMS I64 V8.2 からアップグレードする場合のみ)
4.6 システム・ディスクの準備
4.6.1 ディレクトリ構造のチェックとセキュリティ保護の確保
4.6.2 SYSCOMMON ディレクトリのチェック
4.6.3 システム・ディスクの整合性チェック
4.6.4 システム・ディスクのサイズ・チェック
4.6.5 登録ファイルと AGEN$INCLUDE ファイルのシステム・ディスクへの移動
4.6.6 システム・パラメータの検証
4.7 新しい FEEDBACK.DAT ファイルの用意
4.8 シャドウイング環境
4.8.1 ブート・デバイスの設定
4.8.2 シャドウイングを無効にしたターゲット・ディスクの作成
4.9 システム・ディスクのバックアップ
4.10 アップグレード前の作業の終了

この章では,アップグレードを開始する前の準備作業について説明します。 また,「アップグレード前の準備作業」 に,この章で説明する作業の実施を確認するためのチェック・リストが示してあります。

4.1 アップグレード前の準備作業

システムのアップグレードを実施する前に,表 4-1 「アップグレード前のチェックリスト」 のチェックリストを使用して,必要な作業をすべて確実に実施してください。

表 4-1 アップグレード前のチェックリスト

 作業説明箇所
関連ドキュメントに目を通す「システムをアップグレードする前に内容を確認すべきドキュメント」

次の各項目に関する注意,警告,および制約を確認する

  • V8.3 へのアップグレード・パス

  • アップデート・ライセンスの要件

  • インストールしないコンポーネント

  • システム・ディスクのディレクトリ構成を変更したことで発生するアップグレードの問題

  • レイヤード・プロダクトのライセンスと再インストールの必要性

「注意,警告,および制約」

手作業で削除しなければならないソフトウェアをチェックする

「手作業で削除しなければならないソフトウェア」
必要なファイルがアップグレードで削除されないようにする「アップグレードによる削除からファイルを保護する」
アップグレードに備えてシステム・ディスクを準備する「システム・ディスクの準備」
最近の FEEDBACK.DAT ファイルを用意する「新しい FEEDBACK.DAT ファイルの用意」
ボリューム・シャドウイング環境で行うアップグレードの前に,必要な作業を実施する「シャドウイング環境」
現在のシステム・ディスクをバックアップする「システム・ディスクのバックアップ」
システムをシャットダウンする「アップグレード前の作業の終了」

 

4.2 システムをアップグレードする前に内容を確認すべきドキュメント

この章に記載してある情報の他に,情報源として次のドキュメントやマニュアルを参照する必要がある場合もあります。

OpenVMS V8.3 ドキュメント

  • 配布キットに含まれている『Cover Letter for HP OpenVMS Version 8.3』,『日本語 OpenVMS V8.3 をご使用のお客様へ』,およびソフトウェア仕様書

  • 『HP OpenVMS V8.3 リリース・ノート[翻訳版]』

  • 『HP OpenVMS V8.3 新機能説明書』

OpenVMS V8.2 ドキュメント

次のドキュメントは改訂されていませんが,その内容は OpenVMS V8.3 にも適用されます。

  • 『HP OpenVMS Cluster システム』

  • 『HP OpenVMS Cluster 構成ガイド』

  • 『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』 ― 「システム・パラメータの管理」の章を中心に,AUTOGEN の使用方法,システム・パラメータ・ファイル (MODPARAMS.DAT) の変更方法,およびその関連操作に関する情報が記載されています。

  • 『HP OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』 ― SYSMAN や ANALYZE/DISK_STRUCTURE などのシステム管理ユーティリティを使用する方法が記載されています。

  • 『OpenVMS システム・セキュリティ・ガイド』 ― アップグレードした後にセキュリティの環境を再構築する方法が記載されています。

4.3 注意,警告,および制約

この節には,アップグレードの成否に関係する重要な情報が記載してあります。 アップグレードを開始する前に,ここに記載してある警告,制約,および注意に目を通してください。

4.3.1 アップグレード・パス

OpenVMS V8.3 へ移行するためのさまざまなアップグレード・パスを,以下に示します。

4.3.1.1 直接移行できるアップグレード・パス

OpenVMS I64 V8.3 へ直接アップグレードできるのは,次の各バージョンだけです。

  • OpenVMS I64 V8.2-1

  • OpenVMS I64 V8.2

OpenVMS Alpha V8.3 へ直接アップグレードできるのは,次の各バージョンだけです。

  • OpenVMS Alpha V8.2

  • OpenVMS Alpha V7.3-2

4.3.1.2 間接アップグレード・パス

Version 7.3-2 より前のバージョンの OpenVMS Alpha を使用している場合は,Version 8.3 に直接アップグレードすることはできません。 代わりに,まず Version 7.3-2 にアップグレードしなければなりません (使用している OpenVMS のバージョンによっては,さらに中間のバージョンにアップグレードする必要があります)。 たとえば,OpenVMS Alpha Version 7.1 を使用している場合は,まず Version 7.2,7.2-1,または 7.2-2 のいずれかにアップグレードしてから Version 7.3-2 にアップグレードし,その後 Version 8.3 にアップグレードする必要があります。 OpenVMS Alpha Version 7.2 またはそれ以降を使用している場合は,Version 7.3-2 に直接アップグレードでき,その後,Version 8.3 にアップグレードできます。

4.3.2 アップデート・ライセンスの要件

重要:

OpenVMS V8.3 へアップグレードするには,適切なライセンスを所有している必要があります。

弊社のソフトウェア・ライセンスを購入すると,その製品の現行バージョンまたは購入時点での過去のバージョンを使用する権利が与えられます。

注意:

OpenVMS のソフトウェアとライセンスを初めて購入した時に,弊社から,ライセンス管理機能 (LMF) によるライセンス登録とそれ以降の製品使用の検証・許可を可能にする PAK (Product Authorization Key) が提供されます。 ただし,PAK を提供されたからといって,その PAK だけでライセンスや新バージョンの使用権が与えられるわけではありません。 ライセンスと LMF についての詳細は,『HP OpenVMS License Management Utility Manual』を参照してください。

アップデート・ライセンスが必要な場合は,弊社の営業担当にお問い合わせください。

4.3.3 インストールしないコンポーネントの選択

アップグレード中に,オプションの OpenVMS ネットワーク・ソフトウェア (DECnet または TCP/IP) や DECwindows/Motif GUI をインストールしないように選択すると,その製品はアップグレード・プロシージャによって,システム・ディスクから削除されます。 システムにインストールされている各種ソフトウェアのバージョンが適切かどうかをチェックする方法と,旧バージョンを手動で削除すべき製品があるかどうかを調べる方法については,「手作業で削除しなければならないソフトウェア」を参照してください。

注意:

特に理由がない限り,デフォルトの設定に従って,OpenVMS のオプションをすべてインストールするようお勧めします。 OpenVMS とレイヤード・プロダクトは,これらオプションの多くにさまざまな形で依存しています。 不要と思われるオプションでも,それがインストールされていないと OpenVMS やレイヤード・プロダクトの一部の機能が正しく機能しない可能性があります。

OpenVMS I64 のインストールでは,購入した OE の種類によって一部のオプションが利用できない場合があるので,そのことにも注意してください。 たとえば,OpenVMS Management Station を選択できる OE は,EOE (Enterprise Operating Environment) と MCOE (Mission Critical Operating Environment) だけです。

4.3.4 ライセンスとレイヤード・プロダクト

アップグレード・プロシージャは,アップグレードした後にレイヤード・プロダクトを再インストールしなくても良いように設計されています。 ただし,一部のレイヤード・プロダクトについては,専用のインストール・プロシージャを使用しているために,あらためて再インストールが必要になることがあります。

アップグレードを行っても,OpenVMS とレイヤード・プロダクトのライセンスはそのまま使用できます。 アップグレードの後で,これらのライセンスをインストールし直す必要はありません。

4.4 手作業で削除しなければならないソフトウェア

DECram または TDC V2.0 を現在使用している場合は,アップグレードの前に,これらの製品を手作業で削除しなければなりません。 削除しないと,アップグレードが失敗する場合があります。 手作業で削除する必要のあるソフトウェアについてのその他の情報は,『HP OpenVMS V8.3 リリース・ノート[翻訳版]』を参照してください。

注意:

OpenVMS Alpha のアップグレードでは SSL のバージョンがチェックされ,古いバージョンが見つかると自動的に削除されます。

4.4.1 古いバージョンの DECram for OpenVMS の削除 (Alpha のみ)

DECram for OpenVMS は,OpenVMS V8.2 から OpenVMS オペレーティング・システムに必須のコンポーネントとなりました。 以前にインストールした古いバージョンの DECram for OpenVMS は,OpenVMS Alpha V8.3 へアップグレードする前に手動で削除する必要があります。 アップグレード中に DECram for OpenVMS を自動削除することはできません。 古いバージョンの DECram for OpenVMS がインストールされていると,アップグレードが途中で失敗することがあります。 また,アップグレード自体は完了しても,DECram for OpenVMS がエラーを引き起こす原因になったり,正しく機能しなくなるおそれがあります。 ここでは,オペレーティング・システムから古いバージョンの DECram for OpenVMS を削除する方法について説明します。

アップグレードのためにオペレーティング・システムをシャットダウンする前に,以下の手順で DECram for OpenVMS を削除してください (オペレーティング・システムがすでにシャットダウンされている場合は,リブートしてから以下の手順を実施してください)。

重要:

以下の手順は,V8.2 より前の OpenVMS Alpha でのみ実行してください。

  1. 必要な特権を持つアカウントでログインした後,次のコマンドを実行して,PCSI (POLYCENTER Software Installation) ユーティリティでインストールした DECram for OpenVMS の有無をチェックします。

    $ PRODUCT SHOW PRODUCT DECRAM
    

    DECram がシステムにインストールされていない場合は手順 3 へ進み,見つかった場合は手順 2 へ進みます。

  2. SHOW PRODUCT の結果,DECram for OpenVMS がインストールされていることを示す出力が表示された場合は,次のコマンドを実行して DECram for OpenVMS を削除します。

    $ PRODUCT REMOVE DECRAM
    

    このコマンドが正常に実行されれば,手順は完了です。 以下の手順はスキップしてください。 削除できなかった場合は,手順 3 へ進みます。

  3. 次のコマンドを実行して,VMSINSTAL ユーティリティでインストールした DECram for OpenVMS のファイルがシステムに存在するかどうかをチェックします。

    $ DIRECTORY SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYS$LDR]SYS$MDDRIVER.EXE
    $ DIRECTORY SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYSEXE]MDMANAGER.EXE
    $ DIRECTORY SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYSMGR]MDRECOVER.EXE
    $ DIRECTORY SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYSHLP]DECRAM$HELP.HLB;*
    $ DIRECTORY SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYSTEST]DECRAM$IVP.COM;*
    

    ファイルが見つかった場合は,手順 4 のコマンドを使用して削除します。 ファイルが見つからなかった場合は,手順 5 へ進みます。

  4. 手順 3 で見つかったファイルを,適切な DELETE コマンドを実行して削除します (/NOCONFIRM/NOLOG 修飾子はオプションです)。

    $ DELETE/NOCONFIRM/NOLOG SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYS$LDR]SYS$MDDRIVER.EXE*
    $ DELETE/NOCONFIRM/NOLOG SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYSEXE]MDMANAGER.EXE;*
    $ DELETE/NOCONFIRM/NOLOG SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYSMGR]MDRECOVER.EXE;*
    $ DELETE/NOCONFIRM/NOLOG SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYSHLP]DECRAM$HELP.HLB;*
    $ DELETE/NOCONFIRM/NOLOG SYS$SYSDEVICE:[SYS*.SYSTEST]DECRAM$IVP.COM;*
    
  5. さらに次のコマンドを実行して,スタートアップ・データベースから DECram for OpenVMS のスタートアップ・ファイルを削除します。

    $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
    SYSMAN> STARTUP SET DATABASE STARTUP$STARTUP_LAYERED
    SYSMAN> STARTUP REMOVE FILE MDRECOVER.EXE
    

    -STARTUP-E-FILNOTFND, STARTUP file MDRECOVER.EXE not found」 というエラーは無視してもかまいません。 SYSMAN を終了するには,Ctrl/Z を押すか,EXIT と入力します。

4.4.2 TDC V2.0 の削除 (Alpha のみ)

TDC V2.0 は OpenVMS Alpha V7.3-2 システムで使用するためにリリースされた製品です。 TDC V2.0 がインストールされている場合は,OpenVMS Alpha の最新リリースをインストールする前に,システムから削除してください (「以前のリリースとの互換性」に記載されている Web サイトから TDC の最新バージョンをダウンロードしてインストールすると,V2.0 のファイルは自動的に削除されます)。

アップグレードするオペレーティング・システムをシャットダウンする前に,以下の手順で TDC V2.0 を削除してください (オペレーティング・システムがシャットダウンされている場合は,リブートしてから以下の手順を実施してください)。

  1. 必要な特権を持つアカウントでログインした後,次のコマンドを実行して,PCSI (POLYCENTER Software Installation) ユーティリティでインストールした TDC V2.0 の有無をチェックします。

    $ PRODUCT SHOW PRODUCT TDC
    

    TDC がシステムにインストールされていない場合は,特に処理は必要ありません。 TDC が見つかった場合は,手順 2 へ進みます。

  2. SHOW PRODUCT の結果,TDC V2.0 がインストールされていることを示す出力が表示された場合は,次のコマンドを実行して TDC V2.0 を削除します。

    $ PRODUCT REMOVE TDC
    

4.5 アップグレードによる削除からファイルを保護する

OpenVMS Alpha システムまたは OpenVMS I64 システムにファイル拡張子に _OLD 付きのアーカイブ・ファイルがあると,アップグレードでそれらのファイルが削除されてしまいます。 OpenVMS I64 システムでは,SYS$EFI.SYS ブート・パーティションに追加されたファイルがあったり,同じブート・パーティションにあったファイルが変更されていたりすると,それらのファイルもすべて削除されてしまいます。 これらのファイルを保護して削除を回避する方法について,以下に説明します。

4.5.1 アーカイブ・ファイルの保護

回避策をとらない限り,OpenVMS 修正キットによって filename.type_OLD の名前でアーカイブされたファイルは,アップグレード中に削除されてしまいます。 これらのファイルが削除されるのを回避するには,アップグレードの前にファイル名を変更します。 またこれ以外の方法として,「アーカイブ・ファイルの保護」で説明してあるように,アップグレード中のプロンプトに順次応答することで,削除を回避することもできます。

4.5.2 SYS$EFI.SYS ブート・パーティションで追加/変更されたファイルの保護 (OpenVMS I64 V8.2 からアップグレードする場合のみ)

システム・ディスクを OpenVMS I64 V8.2 から直接アップグレードすると,古いバージョンの SYS$LOADABLE_IMAGES:SYS$EFI.SYS ファイルは削除され,新しいバージョンで置き換えられます。 しかし,OpenVMS I64 V8.2-1 以降のリリースからアップグレードした場合は,このファイルが削除されないで,そのまま残されます。 したがって,既存の OpenVMS I64 が V8.2-1 以降であれば,この項の内容は無視してかまいません。

SYS$LOADABLE_IMAGES:SYS$EFI.SYS は,Integrity サーバで EFI コンソールに使用されるブート・パーティション用のストレージ領域です。 システム・ディスクを OpenVMS V8.2 からアップグレードすると,このパーティションにあったファイルはすべて削除されます。 そのため,ブート・パーティションにファイルを追加していたり,ブート・パーティション上のファイルを変更していたりすれば (こうした可能性は低いのですが,あるとすれば EFI コマンドを使用して追加や変更を行っています) アップグレードを進める前にそれらのファイルをシステム・ディスク以外のストレージにコピーしておき,アップグレードが完了した後でブート・パーティションに戻します。 ただし,その際には,これらのファイルと,EFI Boot Manager のメニューで追加または変更するブート・オプションを混同しないように注意してください。 ブート・オプションはブート・パーティションから完全に切り離されており,アップグレードで削除されることはありません。

4.6 システム・ディスクの準備

この節では,システム・ディスクをアップグレードするための準備について説明します。 実施する作業は次のとおりです。

  • ディレクトリ構造のチェックとセキュリティ保護の確保

  • SYSCOMMON ディレクトリのチェック

  • システム・ディスクの整合性チェック

  • システム・ディスクのサイズ・チェック

  • 登録ファイルと AGEN$INCLUDE ファイルのシステム・ディスクへの移動

  • システム・パラメータの検証

4.6.1 ディレクトリ構造のチェックとセキュリティ保護の確保

システム・ディスクのディレクトリ構造が変更されていると,アップグレード・プロシージャは正しく動作しません。 アップグレードを行う前に,システム・ディスクを標準のディレクトリ構造に戻してください。

OpenVMS のアップグレード・プロシージャは,[VMS$COMMON...] ディレクトリ内に新しいファイルとディレクトリを用意します。 特殊な保護やアクセス制御リスト (ACL) がある場合,現在のセキュリティ環境を再確立するためには,その保護や ACL を再度適用する必要があります。 セキュア環境の作成と維持についての詳細は,『OpenVMS システム・セキュリティ・ガイド』を参照してください。

4.6.2 SYSCOMMON ディレクトリのチェック

アップグレードを成功させる条件の 1 つは,すべてのシステム・ルートにある SYSCOMMON ディレクトリが VMS$COMMON ディレクトリの別名 (またはハード・リンク) になっている,ということです。 この条件が満たされているかどうかをチェックするには,アップグレード対象となるシステム・ディスクからブートした後,次の 2 つのコマンドを実行してファイル識別子を表示し,それらがすべて同じであることを確認します。

   $ DIRECTORY/FILE_ID/NOHEADING/NOTRAILING SYS$SYSDEVICE:[000000]VMS$COMMON.DIR
   $ DIRECTORY/FILE_ID/NOHEADING/NOTRAILING SYS$SYSDEVICE:[SYS*]SYSCOMMON.DIR

アップグレードの対象となるシステム・ディスクからブートしなかった場合は,アップグレードの対象となるシステム・ディスクをマウントした後,上記のコマンドでそのデバイス名を指定します。 たとえば,アップグレードの対象となるシステム・ディスクを DKA100 にマウントした場合は,次のようなコマンドを実行します。

   $ DIRECTORY/FILE_ID/NOHEADING/NOTRAILING DKA100:[000000]VMS$COMMON.DIR
   $ DIRECTORY/FILE_ID/NOHEADING/NOTRAILING DKA100:[SYS*]SYSCOMMON.DIR

最初のコマンドからは,1 つのファイルだけがリストに表示されます。 2 番目のコマンドからは,そのディスク内にあるシステム・ルートごとに,対応するファイルが 1 つずつ表示されます。 表示されたすべてのファイルについて ID が同じであるかどうかをチェックし,その結果に応じて次のように対処します。

  • ファイルの ID がすべて同じ場合は,次の項へ進んで作業を継続します。

  • ファイルの ID の中に一致しないものがある場合は,システム・ディスクのディレクトリ構造が OpenVMS の要件を満たしていないので,アップグレードは成功しません。 この問題の解決方法については,ソフトウェア・サポート担当者に問い合わせください。

4.6.3 システム・ディスクの整合性チェック

ANALYZE/DISK_STRUCTURE コマンドを使用してシステム・ディスクの整合性をチェックし,問題があれば修正します (このコマンドについての詳細は,『HP OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル (上巻)』を参照してください)。 手順は次のとおりです。

  1. 次のコマンドを実行して,システム・ディスクのファイル構造に矛盾やエラーがないかどうかをチェックします。

       $ ANALYZE/DISK_STRUCTURE SYS$SYSDEVICE
    

    次のメッセージは無視してください。

       %ANALDISK-I-OPENQUOTA, error opening QUOTA.SYS
    
  2. システム・ディスクにこれ以外のエラーが見つかった場合は,次のコマンドを実行して,そのエラーを修正します。

       $ ANALYZE/DISK_STRUCTURE/REPAIR SYS$SYSDEVICE
    

    エラーが表示されなくなるまで (手順 1 に示したエラーを除く),手順 1 と 2 を繰り返します。

4.6.4 システム・ディスクのサイズ・チェック

アップグレードにはディスク・スペースが必要ですが,そのブロック数を前もって予測することは簡単ではありません。 必要となるブロックの数は,ターゲット・ディスクにある既存ファイルの数と,アップグレード中に選択するコンポーネントの数に左右されます。 ここでは,その予測に役立つ情報を示します。

  • 必要となるディスク容量は,最大で約 675,000 ブロックです。 システムで実際に使用される値は,これよりもかなり小さくなる可能性があります。

  • アップグレードでインストールする各コンポーネントを選択すると,十分なディスク・スペースが存在するかどうかが計算されて,利用可能なブロック数とアップグレードに必要なブロック数が表示されます。 この計算でアップグレードの実行に必要なディスク・スペースが足りないということがわかると,警告メッセージが表示されます。そのため,アップグレードをその時点で終了し,十分なディスク・スペースを確保した後で,再度アップグレードを試みることができます。

    注意:

    システム・ディスクにあるファイルが著しく断片化していると,数字上は十分なディスク・スペースが存在していても,アップグレードを完了できない可能性があります。 したがって,アップグレードの前にシステム・ディスクをバックアップしリストアするようお勧めします。 システム・ディスクをそのバックアップ・イメージからリストアすると,ファイルの断片化を解消することができます。 システム・ディスクのバックアップとリストアについては,付録 E 「システム・ディスクのバックアップとリストア」 を参照してください。

利用可能なスペースがシステム・ディスクにどれだけあるかを確認するには,次のコマンドを実行します。

   $ SHOW DEVICE SYS$SYSDEVICE

4.6.5 登録ファイルと AGEN$INCLUDE ファイルのシステム・ディスクへの移動

登録ファイルと AGEN$INCLUDE ファイルがシステム・ディスク以外のディスクに置いてあると,アップグレード・プロシージャでは,それらのファイルを見つけることができません。 その理由は,アップグレードでは他のディスクがマウントされないからです。 また,それらのファイルを指すように設定されていた論理名も,アップグレードの間は,未定義の状態になってしまいます。 この項では,登録ファイルと AGEN$INCLUDE ファイルをアップグレード・プロシージャで利用できるようにする方法を説明します。

4.6.5.1 登録ファイル

OpenVMS では,一部のシステム・ファイル (主に登録ファイルなど) をシステム・ディスク以外のディスクへ再配置することができます。 そのような再配置を行う場合は,対象となるファイルを他のディスクへコピーするとともに,論理名を定義します (論理名の定義方法は,SYS$SYSTEM:SYLOGICALS.TEMPLATE ファイルに記載されています)。 論理名は SYS$STARTUP:SYLOGICALS.COM で定義します。

OpenVMS オペレーティング・システムのメディアからブートしたシステムでは,再配置されているファイルを指す論理名が定義されていないので,それらのファイルがあるディスクもマウントされません。 そのため,それらのファイルへアクセスできなくなって,アップグレードの結果が正しくなかったり不完全になったりする可能性があります。 また,アップグレードがエラーなしで完了しても,本来の場所に存在すべきファイルが存在しないということもありえます。

システムをアップグレードする前に,そのシステムで定義されている論理名をチェックしてください (再配置されていないファイルについては対応する論理名が定義されていない場合もありますが,問題はありません)。 表 4-2 「論理名と,登録ファイルの場所および名前との関係」 に,論理ファイル名と,それが指し示す場所およびファイル名との対応関係を示します。 指し示す場所やファイル名がこの表と一致していない論理名が見つかった場合は,そのファイルをデフォルトの場所と名前に戻してください。 システムがシステム・ディスク以外の場所にあるファイルを参照しないようにするには,関連付けられている論理名を削除するか (DCL の DEASSIGN/SYSTEM/EXEC コマンドを使用),またはオペレーティング・システムをシャットダウンして,オペレーティング・システムのメディアからリブートします。 アップグレードが完了した後でオペレーティング・システムをブートする前に OpenVMS オペレーティング・システムのメニューにある DCL オプション (8) を使用すれば,システム・ディスクへ移動したファイルを,システム・ディスク以外の元の場所に戻すことができます。

表 4-2 論理名と,登録ファイルの場所および名前との関係

論理名場所とファイル名
LAN$NODE_DATABASESYS$SYSTEM:LAN$NODE_DATABASE.DAT
LMF$LICENSESYS$SYSTEM:LMF$LICENSE.LDB
NETNODE_REMOTESYS$SYSTEM:NETNODE_REMOTE.DAT
NETNODE_UPDATESYS$MANAGER:NETNODE_UPDATE.COM
NETOBJECTSYS$SYSTEM:NETOBJECT.DAT
NETPROXYSYS$SYSTEM:NETPROXY.DAT
NET$PROXYSYS$SYSTEM:NET$PROXY.DAT
RIGHTSLISTSYS$SYSTEM:RIGHTSLIST.DAT
SYSUAFSYS$SYSTEM:SYSUAF.DAT
SYSUAFALTSYS$SYSTEM:SYSUAFALT.DAT
SYSALFSYS$SYSTEM:SYSALF.DAT
VMSMAIL_PROFILESYS$SYSTEM:VMSMAIL_PROFILE.DATA
VMS$AUDIT_SERVERSYS$MANAGER:VMS$AUDIT_SERVER.DAT
VMS$OBJECTSSYS$SYSTEM:VMS$OBJECTS.DAT
VMS$PASSWORD_DICTIONARYSYS$LIBRARY:VMS$PASSWORD_DICTIONARY.DATA
VMS$PASSWORD_HISTORYSYS$SYSTEM:VMS$PASSWORD_HISTORY.DATA
VMS$PASSWORD_POLICYSYS$LIBRARY:VMS$PASSWORD_POLICY.EXE

 

4.6.5.2 AGEN$INCLUDE ファイル

追加パラメータの設定が定義されているファイルを AGEN$INCLUDE 機能で SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT にインクルードしている場合は,そのインクルード・ファイルがシステム・ディスクに存在しているかどうかをチェックし,存在していなければ,アップグレードの前に次の手順を実行します。

  1. それらのファイルをシステム・ディスクへ移動します。

  2. AGEN$INCLUDE のエントリを修正して,移動したファイルの新しい場所を反映させます。 スタートアップ・プロシージャが正常に動作するようにするには,これらのエントリで,SYS$STARTUP:SYLOGICALS.COM (または,通常の起動プロシージャで使用するその他の場所) に定義してある論理名を使用しないでください。 アップグレードを行うために OpenVMS オペレーティング・システムのメディアからブートしたシステムでは,通常の起動プロシージャが実行されません。そのため,これらの倫理名を使用していると,アップグレードのときに実際のファイルを見つけることができません。 また,アップグレードしたシステムを最初にブートする際も事情は同じです。この場合も,特殊なスタートアップ・プロシージャが使用されます。

移動したファイルは,アップグレードが完了した後で元の場所に戻すことができます。 元の場所へ戻したら,必ず SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT 内の AGEN$INCLUDE エントリを再設定してください。

4.6.6 システム・パラメータの検証

以下の説明に従ってシステム・パラメータ検証し,必要であれば変更します (システム・パラメータを変更する方法についての詳細は,『OpenVMS システム管理者マニュアル (下巻)』を参照してください)。 変更しても SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT ファイルに入れておかなかったシステム・パラメータは,アップグレードですべて失われてしまいます。 システム・パラメータの変更を保持するには,変更したパラメータの名前とその変更後の値を,SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT に入れておきます (アップグレードの後に実行される AUTOGEN では,その SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT 内の値が使用されます)。

たとえば,GBLPAGES の現在の値 30000 をそれより 128 ページ大きい値に変更したときは,SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT に次の行を追加します。

   MIN_GBLPAGES=30128   !Increased by 128 by PLM for product z 12/12/04

AUTOGEN では,この新しい GBLPAGES の値を収集データと比較し,必要に応じてその値を増やします。 AUTOGEN では実行のたびに同様の比較を繰り返して GBLPAGES の値を調整します。しかし,その値が MIN_GBLPAGES で定義されている最小値より小さくなることはありません。

基本的には,すべてのシステム・パラメータの値がアップグレード中にデフォルトへ戻されます。 現在のフィードバックを使用してください。

重要:

システム・パラメータの設定を変更する場合は,以下の点に注意してください。

  • 特別な理由がない限り,システム・パラメータは,AUTOGEN に調整させてください。 パラメータの値を明示的に設定することも可能ですが (例: GBLPAGES=value),そのような設定は AUTOGEN より優先されるので,AUTOGEN で実際の使用状況に基づいた最適値を設定しても無効になる可能性があります。

  • MIN_parameter (MIN_GBLPAGES など) を可能な限り使用して,AUTOGEN によるパラメータ値の調整に下限を設定してください。 AUTOGEN では,必要に応じて設定値を増やします。また,関連するパラメータが明示的に設定されていなければ,その値も調整します (そのようなパラメータについては,AGEN$PARAMS.REPORT ファイルにその情報が出力されます)。 パラメータの上限値が分っている場合は,MAX_parameter を使用してその値を設定します。

  • 数値は,コンマなしの整数で入力してください。 たとえば,10,000 ではなく 10000 と入力します。 英字は,大文字または小文字のどちらで入力してもかまいません。

  • MODPARAMS.DAT ファイルには,値を変更したユーザ,変更日,および変更理由を示すコメントを含めることをお勧めします。 感嘆符 (!) はコメントの開始を表します。感嘆符は,行内のどの位置でも使用できます。 次に,これらの注意点を反映した設定変更の例を示します。

    ! the following changes made by K.Newcomb on 9/20/03
    !
    SWAPFILE=0                    ! don’t re-size the SWAPFILE on AUTOGEN runs
    MIN_gblsections=750           ! required for DECwindows MOTIF
    MIN_NPAGEDYN=2750000          ! set npagedyn to a min of 2.75 million
    

AUTOGEN を推奨内容に合わせて使用する方法についての詳細は,「AUTOGEN によるシステムの調整」を参照してください。

アップグレードを以前実施したシステムには,そのときに新しく生成した SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT ファイルが存在します。 このファイルにはコメントが含まれています。また,アップグレード中に生成されたエントリが重複している可能性もあります。 そのため,同じシステムを再度アップグレードすると,SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT が必要以上に大きくなって,内容も分かりにくくなります。 したがって,アップグレードを再実行する場合は,その前に SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT を編集して,内容を整理するようお勧めします。

注意:

クラスタ・システム・ディスクでは,各ルートの SYS$SYSROOT:[SYSEXE] に MODPARAMS.DAT ファイルが存在します。 したがって,MODPARAMS.DAT の編集は,ルートごとに行う必要があります。

4.7 新しい FEEDBACK.DAT ファイルの用意

システムをアップグレードする前に,新しい AGEN$FEEDBACK.DAT ファイルを用意するようお勧めします。 このファイルは SYS$SPECIFIC:[SYSEXE] の中,つまり,[SYSx.SYSEXE] (x はルートを表す値で,たとえば SYS0,SYS1 など) にあります。 OpenVMS Cluster システムでは,各ノードの SYS$SPECIFIC ディレクトリにこのファイルがあります。 アップグレードした後にシステム (またはクラスタ内の各システム) をリブートすると,AUTOGEN が実行されます。 AUTOGEN では,新しい AGEN$FEEDBACK.DAT ファイルが存在するとそれを使用し,そのファイル内のデータに基づいて,実際のアプリケーションやワークロードを反映した値をシステム・パラメータに設定します。

注意:

新しい AGEN$FEEDBACK.DAT ファイルが存在しないと,システム・パラメータに設定する値が AUTOGEN で計算されます。しかし,AUTOGEN で計算した値は,システムのニーズに合っていない可能性があります。 そのような場合は,レイヤード・プロダクトがすべて起動するまで,AUTOGEN の実行とリブートを繰り返さなければならないことがあります。また場合によっては,MODPARAMS.DAT へエントリを追加することが必要になることもあります。 新しい AGEN$FEEDBACK.DAT ファイルが存在すれば,そのような事態を避けることができます。

システムに AGEN$FEEDBACK.DAT ファイルが存在しない場合は,システムが通常のワークロードで動作しているときにそのファイルを作成するようお勧めします。 ただしデータの信頼性を高めるために,このファイルは 24 時間以上動作しているシステムで 30 日以内に作成してください。 次のコマンドを実行します。

   $ RUN SYS$SYSTEM:AGEN$FEEDBACK.EXE

このコマンドは処理が瞬時に行われるので,システムの性能に影響を与えることはありません。

なお,SYS$SYSTEM:SHUTDOWN.COM プロシージャを実行する際に SAVE_FEEDBACK オプションを指定することもできますが,取得したデータにシステムの通常のワークロードが十分に反映されている保証はありません。

重要:

実行モード・パラメータ (FEEDBACK,NOFEEDBACK,または CHECK_FEEDBACK) を指定しないで AUTOGEN を実行した場合は,計算にフィードバック情報が使用されます。 ただし,フィードバック情報がまだ 24 時間以上連続動作していないシステムから得られたものであったり,1 カ月以上前に得られたものであったりした場合は,AUTOGEN から,フィードバック・データに問題がある可能性を知らせる警告が AGEN$PARAMS.REPORT ファイルに出力されます。 フィードバックの信頼性が十分でないと,AUTOGEN によって設定されたパラメータの精度が著しく低下するおそれがあります。

FEEDBACK を指定すると,AUTOGEN ではデータの信頼性に関係なく,常にフィードバック・データを使用します。 また,NOFEEDBACK を指定すると,データの信頼性に関係なく,フィードバックをいっさい使用しません。 最終フェーズとして SETPARAMS,SHUTDOWN,または REBOOT を指定すると,AUTOGEN では SETPARAMS フェーズまで進んで,システム・パラメータに計算した値を設定します。

CHECK_FEEDBACK を指定すると,AUTOGEN ではフィードバック・データの妥当性をチェックします。 その結果,妥当性が低いと判定すると,AUTOGEN ではフィードバックを無視してパラメータの値を計算します。 その場合,AUTOGEN の実行は TESTFILES フェーズで停止し,パラメータの値が変更されていないことを知らせる警告が表示されます。 この警告が表示されたら,その内容に目を通し,計算された値が妥当かどうかを判断してください。 そのまま使用する場合は AUTOGEN SETPARAMS を実行します。 妥当でないと判断した場合は,適切なフィードバック・データを用意して AUTOGEN を再実行します。

4.8 シャドウイング環境

シャドウ・システム・ディスクにアップグレード対象のオペレーティング・システムがあると,そのままではアップグレードできません (アップグレードを試みても失敗します)。 アップグレードするには,システム・ディスクのシャドウイングを前もって無効にするとともに,他の前処理も行う必要があります。

シャドウイングを無効にしたターゲット・ディスクは,いくつかの方法で作成できます。 ここでは,マルチ・メンバ・シャドウ・セットから既存のシャドウ・システム・ディスクを 1 つ選び,そのディスクのシャドウイングを無効にして,アップグレードのターゲット・ディスクとして使用する方法を説明します。

比較的規模の大きな構成で,しかもそのディスクへ物理的にアクセスできるという環境では,シャドウ・システム・ディスクのコピーを作成して,それをターゲット・ディスクとして使用することもできます。 シャドウイングのコマンドまたは BACKUP コマンドを使用してコピーを作成する方法と,ボリューム・シャドウイングを無効にする方法については,『Volume Shadowing for OpenVMS 説明書』を参照してください。

4.8.1 ブート・デバイスの設定

アップグレードを行う場合は,システムがアップグレード対象のディスクからデフォルトでブートするように設定しておく必要があります。 OpenVMS Alpha システムでこの設定を行うには,コンソール・コマンドの SHOW BOOTDEF_DEV と SET BOOTDEF_DEV を使用します (詳細は,付録 A 「OpenVMS Alpha システムのブートとシャットダウン」 を参照してください)。

OpenVMS I64 システムの場合は,OpenVMS I64 Boot Manager ユーティリティ (SYS$MANAGER:BOOT_OPTIONS.COM) を使用して,マルチ・メンバ・シャドウ・セット内のシャドウ・システム・ディスクを EFI のブート・デバイス・リストとダンプ・デバイス・リストに追加しておくことをお勧めします。 またその場合に必ずすべてのメンバを,両方のリストに追加してください。 ブート・オプションの設定と,このユーティリティの使用方法についての詳細は,「システム・ディスクのブート・オプションの設定」を参照してください。

4.8.2 シャドウイングを無効にしたターゲット・ディスクの作成

既存のシャドウ・システム・ディスクを 1 つ選んで,シャドウイングを無効にしたディスクにするには,以下の手順を実行します。

重要:

アップグレードするボリュームを MOUNT/OVERRIDE=SHADOW_MEMBERSHIP コマンドでマウントしても,それだけであると,ボリューム・シャドウイングによって,アップグレードしたディスクがアップグレード前のボリューム情報で上書きされる可能性があります。

  1. シャドウ・システム・ディスクからブートしたすべてのシステムをシャットダウンします。

  2. ターゲット・ディスクとして使用するシステム・ディスクで会話型ブートを実行します (OpenVMS Alpha システムの場合は「会話型ブート」を,また OpenVMS I64 システムの場合は「対話型ブートの実行」をそれぞれ参照してください)。 OpenVMS Alpha システムでは,次のコマンドを実行します。

       >>> BOOT -FLAGS 0,1 DKA100
    

    OpenVMS I64 システムでは,EFI Shell のプロンプトに対して次のコマンドを実行します。 fsn: には,システム・ディスクに関連付けられているデバイス (fs1: など) を指定します。

       Shell>fsn:\efi\vms\vms_loader.efi -flags 0,1
    
  3. SYSBOOT> プロンプトに対して次のコマンドを実行し,システム・ディスクのボリューム・シャドウイングを無効にします。

       SYSBOOT> SET SHADOW_SYS_DISK 0
    
  4. CONTINUE コマンドを実行して,ブート・プロシージャを再開します。 次に,その例を示します。

       SYSBOOT> CONTINUE
    
  5. ブートが完了したら,「アップグレード前の作業の終了」へ進みます。

以上の手順が完了すれば,シャドウイングを無効にしたシステム・ディスクが作成されて,アップグレードに使用することができます。

4.9 システム・ディスクのバックアップ

システム・ディスクは必ずバックアップすることを強くお勧めします。 また可能な限り,バックアップ・コピーもアップグレードしておくことをお勧めします。 バックアップをとっておけば,問題が発生したときにそのバックアップをシステム・ディスクとして使用することで,運用を継続することができます。

注意:

OpenVMS のエンジニアリング・グループでは,アップグレードの前にシステム・ディスクのバックアップをとっておかなかったために,アップグレードに失敗したシステム・ディスクの回復が困難,高くつく,あるいは不可能になったケースを何度も経験しています。 アップグレードの途中でハードウェアやソフトウェアのさまざまな障害または電源障害などが発生して,システム・ディスクが使用できなくなることがあります。 そのような場合を想定した唯一の回復方法は,おそらくバックアップ・コピーだけです。 バックアップを作成するためのわずかな手間が,コスト面では非常に大きな意味を持ちます。

システム・ディスクをバックアップするには,以下の手順を実行します。

  1. システムをシャットダウンします (OpenVMS Alpha システムの場合は「システムのシャットダウン」を,また OpenVMS I64 システムの場合は「システムのシャットダウン」をそれぞれ参照してください)。

  2. オペレーティング・システムのメディアをブートします (OpenVMS I64 の場合は「ブート操作」の説明に,また OpenVMS Alpha の場合は「ブート操作」の説明にそれぞれ従います)。

  3. オペレーティング・システムのメニューでオプション 8 を選択し,DCL 環境に入ります。

  4. システム・デバイスと,バックアップ・コピーの作成先となるターゲット・デバイスをマウントします (テープにバックアップする場合は,次の手順へ進んでください)。 たとえば,システム・ディスクを DKA0: に,またターゲット・デバイスを DKA100: にそれぞれマウントする場合は,次のコマンドを使用します。 この例では /OVERRIDE 修飾子を指定しています。そのため,ボリューム・ラベルを入力しなくてもシステム・ディスクをマウントできます。 BACKUP /IMAGE コマンドを使用する場合は,/FOREIGN 修飾子を指定してターゲット・ディスクをマウントしておく必要があります。

       $$$ MOUNT /OVERRIDE=IDENTIFICATION DKA0:
       $$$ MOUNT /FOREIGN DKA100:
    

  5. システム・ディスクを磁気テープにバックアップする場合は,次のコマンドを実行します。 MTA0: には磁気テープ・ドライブを,また label にはボリューム・ラベルをそれぞれ指定します。 BACKUP コマンドを実行すると,テープが自動的にマウントされて,バックアップが開始されます。

       $$$ INITIALIZE MTA0: label 
       $$$ MOUNT /OVERRIDE=IDENTIFICATION DKA0:
       $$$ BACKUP /IMAGE /LOG DKA0: MTA0:label.BCK 
    

  6. 磁気テープ・ドライブ以外のデバイスにバックアップする場合は,BACKUP コマンドを実行します。 たとえば,システム・ディスクを DKA0: に,またターゲット・ディスクを DKA100: にそれぞれマウントしている場合は,次のコマンドを実行します (コロン記号は省略しないでください)。

       $$$ BACKUP /IMAGE /LOG DKA0: DKA100:
    

    このバックアップ・コマンドには /IMAGE 修飾子が指定されているので,システム・ディスクのコピーと同様,ブート可能なディスクが作成されます。 また /LOG 修飾子が指定されているので,バックアップの処理に合わせて各セーブ・セットの仕様が順次表示されます。 バックアップ・ファイルとソース・ファイルを比較して検証させる場合は,/VERIFY 修飾子を指定します。 検証で不一致が見つかると,Backup ユーティリティからエラー・メッセージが表示されます。

  7. DCL 環境からログアウトします。

  8. メニューからオプション 9 を選択して,システムをシャットダウンします。

オペレーティング・システムのメディアを使用しない方法やバックアップ操作などに関する詳しい説明は,付録 E 「システム・ディスクのバックアップとリストア」 を参照してください。 Backup ユーティリティについての詳細は,『HP OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル (上巻)』を参照してください。

4.10 アップグレード前の作業の終了

アップグレード前の作業を次の表に従って続けます。この表は,スタンドアロン環境でアップグレードする場合と,OpenVMS Cluster 環境でアップグレードする場合に分けてその手順を記載してあります。

条件操作

スタンドアロン・システムをアップグレードする

  1. SYSTEM アカウントでログインする。

  2. 次のコマンドを実行する。

    $ @SYS$SYSTEM:SHUTDOWN
    
  3. システムを自動的にリブートするかどうか尋ねるプロンプトが表示されたら,N (NO) と入力する。

  4. この章の冒頭にあるチェックリストを使って,必要な作業がすべて完了したことを確認する。

  5. 第6章 「OpenVMS オペレーティング・システムのアップグレード」へ進んで,アップグレードを開始する。

OpenVMS Cluster システムをアップグレードする

  1. この章の冒頭にあるチェックリストを使って,必要な作業がすべて完了したことを確認する。

  2. 第5章 「OpenVMS Cluster 環境でのアップグレードの準備」へ進む。

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