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VAX & VMSものがたり


第10章 Alphaへの橋を渡す

Prism: RISCテクノロジーによるVMS

オペレーション担当のJack Smith副社長が、Dave Cutlerの肩を軽くたたいて 「君がDECのRISCの総責任者と決まった。プロジェクトチームを組織したまえ。」と言った1986年に、 DECのRISCテクノロジーの開発が始まりました。プログラムチームが編成され、 Prismというコード名を付けられたプログラムの目的は、DECのRISCマシンを開発することでした。 そのオペレーティングシステムは、次世代の設計原理を実現し、 UNIXとVMSとの互換レイヤを有することになっていました。

チームでは次の問題が討議されました。32ビットと64ビットのどちらにするか? コマーシャル市場かテクニカル市場のいずれをターゲットとするか? 提案されたPrismのインプリメンテーションはECLマシンでした。 ECLは特に多くの電源を消費することで知られていましたが、 これが1970年代80年代を通じて利用できる最高速のテクノロジーでした。 VAX8600、8800、9000の各シリーズはECLを使用して作られました。 しかし1991年のNVAXチップからCMOSテクノロジーがECLの性能を超え、消費電力も大幅に低減していました。

このとき既にVAX9000とVAX8800の後継機という2つのプロジェクトが進行していました。 これらのマシンは競合力があるのだろうか、マーケットが重なり合うのではないか? 性能比較はどうなるのか? コストは? DECにとって同じような3つのプロジェクトを 進めることは意味がないことは明白でした。

1988年4月にワークステーション エンジニアの1グループによって、 既存のRISCテクノロジーを使用してDECのテクニカルコンピューティングの市場を 切り開くための対抗案が提案されました。彼らは、MIPSというスタートアップ企業のマイクロプロセッサを使用して、 DECのUNIX版であるULTRIXを走らせるワークステーションを作り始めました。 MIPSテクノロジーの利用が決定され、Prismはキャンセルされました。


高速のMicroPrismチップ

他方、マサチューセッツ州ハドソンのセミコンダクタグループでは、MicroPrismチップを開発していました。 これはCMOSによるPrismアーキテクチャのワンチップ化によるインプリメンテーションでした。 Prismプログラムがキャンセルされても、MicroPrismチップは完成間近だったので、 ハドソンのグループはこれを完成させることを許されていました。 小さなバッチから製造されたMicroPrismチップは、45MHzで完全に動作しました。 この速度は当時最高速で、市場にあったどのRISCチップのパフォーマンスをも超えたものでした。


Alphaの誕生

Prismプログラムは、それがDECの将来の64ビットテクノロジーであるAlphaに残した遺産という意味で、 DECにとって大きな意味を持つものでした。1988年には、VMSにとって、 どのRISCテクノロジーが最適かを決定するために、小さなチームが編成されました。 最初に彼らは「VMSをRISCに乗せるにはどういう作業が必要か?」と自問し、 次に彼らはこの疑問を逆にしました。「顧客に移行プロセスが必要ならば、 どうすれば最小の負担で最高のパフォーマンスを得られるか?」こうしてAlphaが生まれたのです。

Alphaはまるで「Prismの息子」でした。 Alphaを作るために必要な主な変更点はVMSとの互換性を目的としたものでした。 元々のPrismのデザインには、VAXとVMSにとって重大な、互換性上の問題点が2つの領域でありました。 それは数値データ型と特権アーキテクチャでした。

Alphaアーキテクチャは4つの前提の上に構築されました。始めに、 それは非常に命の長いものでなければなりません。 次にテクニカルとコマーシャルの両方のアプリケーションで、 最高のパフォーマンスを提供する必要がありました。 第3に実装サイズとサポートするシステムの範囲の両面で、 スケーラビリティが大きくなければなりません。 第4に顧客のアプリケーションと、VMSとUNIXという2つの オペレーティングシステムをサポートしなければなりません。 Windows NTは、まだこのシーンには登場していませんでした。

VMSからAlphaへのポーティング

 

Alphaアーキテクチャの設計を進める間、最も注意を要した大仕事はVMSでした。 Nancy Kronenbergが、ほとんど解決不可能と思えるVMSについての作業のリーダーとなりました。 VMSには1000万行以上のコード行があり、そのほとんどはVAXアセンブリコードで書かれていました。 これらはVAXインストラクションセットの特長を生かしてコード化されていたので、 VMSをVAXから分離する方法は明確ではありませんでした。

慎重な分析の結果、Nancyのチームは、VMSは一体に見えても、実はマシンに依存したレイヤと 独立したレイヤとに分離可能な、非常に良く構成されたオペレーティングシステムであることを発見しました。 マシンディペンデェントなレイヤをポートして、マシンに依存しない部分の作業は後回しにすることができました。 チームは、VAXマクロコードを高級言語として取り扱いAlphaにコンパイルできる マクロコンパイラなどの解決策を開発しました。

1991年には、VMSをAlphaにポートするという最後の作業がJean Proulxと彼女のチームに引き渡され、 彼らは困難なポーティング作業を見事に成し遂げました。 これでVMSはAlpha-readyとなりました。

 

Rich Marcello(OpemVMSシステム ソフトウェアグループ副社長)の話

 

「我々は、VAXからAlphaへの移行が非常に簡単にできるように、多くの注意を払いました。 一度に全環境をAlphaに移行することを望まない顧客は、徐々に移行することができます。 我々は、クラスタにVAXとAlphaが一緒に稼働できるミックスアーキテクチャクラスタをサポートします。 顧客は希望する限りVAXに残ることができます。我々はOpenVMS AlphaとOpenVMS VAXを同時にリリースして行きます。」

 

基本的な質問を問い続ける

チームは基本的な質問を投げかけながら決定を下してゆきました。 「もし目的が20年をターゲットとするものならば、今後20年間32ビットマシンに生命があるだろうか?」 答えは「ノー」でしたので、64ビットマシンと決定されました。これは簡単な部分でした。 クロック速度の向上、複数の命令実行、内部構成、そしてマルチプロセシングを通じてパフォーマンスを 20年先まで向上するには何が必要なのか? そのアーキテクチャは正に、これを可能にするものとなりました。

小から大までのスケーラビリティの問題を検討し、それにより最小のインプリメンテーションが どんなものになるかのモデルを用意しました。Prismで行った研究が、 オペレーティングシステムのデータ柔軟性とコードハンドリング上の問題を解決する上で役立ちました。 もう一つの重大な開発上の問題は、DECの顧客が最終的に64ビットコンピューティングにスムースに 移行することを保証するための、VAXからAlphaへのバイナリトランスレーションの考えでした。

  Alpha 1号機のパワーアップの際に工場を訪問したKen Olsen
Alpha 1号機のパワーアップの際に工場を訪問したKen Olsen

Alphaの構成要素の決定

Alphaの基本的な構成要素は、DECの顧客の投資を保護しながら、 最高のパフォーマンスをもつ64ビットへ移行するというアーキテクチャ上のコミットメント、 顧客の運用環境を保護するためのVMSに対する同様のコミットメント、 そして業界が激しく競い合っていたシリコンでした。設計チームは、 MicroPrismプロジェクトの中で発見した高速実装技術を研究しました。 その結果チームは業界他社のどれよりも2倍から3倍高速で走るチップを開発できるという結論を下しました。 それは、競合他社が50MHzを議論しているときに200MHzで走るものでした。


全社を巻き込んで

Alphaプログラムは、最先端システムによってDECを再びトップに戻すというビジョンを 共有した人々の緩やかな連合として遂行されました。VMSの中に1つのAlphaプロジェクトがあり、 半導体グループにも1つのAlphaプロジェクトがありました。これらのチームメンバーが社内の他部門に出向き、 1グループごとに参加を納得しました。そして、全社の約1/3のエンジニアリングリソースが参加することになりました。


ビジネス パートナーの準備

DECのビジネスパートナーがこの記録破りのテクノロジーを最大限利用できるように、 Bill Demmer副社長は、パートナーが発表時までにサインアップして準備が完了できるように、 発表の6ヶ月前にAlpha AXPパートナー オフィスを創設しました。当初のAlphaパートナーには、 アンダーセンコンサルティング、クレイリサーチ、アンコール、クボタパシフィックコンピュータ、 レイセオン、オリベッティが含まれていました。

1992年9月までに、DECは1,000台以上のAlphaシステムをソフトウェア開発各社に出荷しました。


顧客からのインプット

顧客のニーズに応えるために、DECはこの新しいテクノロジーをサポートするプログラムとサービスを開発しました。 64ビット機の発表の2年前から、顧客グループが構成され、Alpha AXPプログラム計画を定期的にレビューしました。 Alpha AXPカスタマーエンドユーザアドバイザリというこのグループには、通信、製造、テクノロジー、 政府機関、大学関係者、その他のAlphaテクノロジーの潜在的顧客からの代表が含まれていました。

写真: 最高2BIPSのピーク実行速度をもつ最高性能のAlpha 21164チップが、ビデオ コンファレンス、 3-Dモデリング、ビデオ編集、マルチメディアオーサリング、イメージレンダリング、 アニメーションなどのビジュアルコンピューティング アプリケーションの限界を広げました。

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