x86サーバーの歴史を振り返ると、x86サーバーの形状の進化をみることができます。x86サーバーはもともとパソコン(PC)の技術をサーバーに転用しようとして開発されました。そのため、当初はPCサーバーと呼ばれ、形状もデスクトップPCと同じ据え置き型の「タワー型」でした。その後、x86サーバーの普及と共に導入台数が増えてきて、同じ面積により多くのサーバーを収容したいというニーズの高まりとともに、「ラックマウント型」が誕生しました。さらに、Windows ServerやLinux OSの普及とインターネットの普及の波に乗り、大量のサーバー導入ニーズが拡大したため、更なる高集約や省電力、運用管理性の向上を目指して「ブレード型」が生まれました。最近では、スケールアウトのワークロードに特化した「高密度型」と呼ばれるサーバーが生まれてきました。
ここでは、用途に応じた様々な形状のサーバーについて、主に外観形状を中心に、種類と特長をご紹介します。


タワー型とラックマウント型


まず、サーバーの提供形態を大きく2つに分けると、デスクトップ パソコンのような床置きや卓上に置くタイプと、ラックという専用のキャビネットに搭載(マウント)するタイプの2種類があります。それぞれ一般的にタワー型とラックマウント型と呼ばれています。
タワー型は、主にオフィスや数台のサーバーを利用する環境で使用することが多く、1台で様々な役割をこなせるようシステム筐体内の拡張性を最大化したサーバーです。筐体内部にはドライブ増設用のスペースを持っていて、内蔵可能なオプションの種類や搭載数が多いなどの特長があります。たとえば、データのバックアップ用にテープドライブを内蔵できたり、様々な役割のカードをたくさん搭載できるように、カード搭載用スロットを多く装備していたりします。また、オフィス環境での利用を想定して、筐体内の冷却ファンの動作音がラックマウント型よりも比較的静かであったりもします。
反面、不向きな点は、複数のタワー型を一箇所に配置しようとすると設置面積が増えることです。タワー型は筐体のサイズに規定がなく、機種によって不揃いになりがちですし、高密度に設置するのには適していません。



対して、ラックマウント型は、複数のサーバーをラックという専用のキャビネットの中に縦に積み上げて設置することで、限られたスペースを最大限無駄なく利用できるよう設計されています。サーバー内部のコンポーネントも高密度化が図られていて、ラックマント用に最適化されています。一般的にラックマウント型サーバーという時には、米国電子工業会(EIA)が規定した19インチラックに搭載できるサーバーのことをいいますので、以後はそれを前提に説明します。
ラックマウント型では、サーバーをラックに搭載する際に必要になる筐体の高さのサイズをU(ユー)という単位を使って管理しています。ラックの1ユニット(1スペース分)の高さのサイズを、1Uという44.5mmの単位で規定することで、ラックマウント型サーバーの高さのサイズを、1U/2U/4UのようにU数で把握できるようになっています。



U数の利用例をあげると、サーバーを搭載するラックには14U/22U/36U/42U/48Uなど、高さをU数で示したラックが提供されていますが、例えば高さ2mほどの42Uサイズのラックに1Uサイズのラックマウント型サーバーを搭載した場合は、最大42台の搭載が可能です。2Uサイズのサーバーの場合は、21台の搭載が可能です。このようにサイズをUという単位に共通化することで、どのベンダーの製品であっても、ラックの消費するスペースを簡単に把握することができるようになっています。
ラックマウント型は、ラック内に複数台搭載することからタワー型には無い特徴があります。
たとえば、1ラックに複数のサーバーが搭載されて搭載密度が高まるため、熱がたまりやすく、また、面積当たりの消費電力量や重量も非常に大きくなります。そのため、サーバー単体ではなくラックトータルでみた、電力設備や空調設備、床の耐荷重など、ラックを設置する環境にも配慮が必要になります。
また、稼働音もタワー型に比べ大きくなります。ものを冷やす際には、送り込む空気の温度もそうですが、どれだけ空気を送れるかという風量がとても大きく影響を与えます。内部空間が小さく、小さな冷却ファンしか搭載できないラックマウント型では適切な冷却を実現するために、ファンが非常に高速で回転を行うため、稼働音がとても大きくなります。


タワー型とラックマウント型のファン比較


このようにラックマウント型は、サーバーを設置する環境を選ぶことやその騒音から、一般のオフィス環境への設置には、あまり適しません。データーセンターやコンピュータールームなど、空調設備の整った専用の部屋で使用されるのが一般的です。大量のサーバーや周辺機器を一箇所で集中的に管理するような環境での利用に適しています。

ラックマウント型とタワー型では、サーバーの使い方も少し異なります。ラックマウント型は、タワー型のように1台のサーバーで何でもこなすのではなく、例えばWebサーバー、メールサーバー、データベースサーバーのように、サーバーの用途ごとに分けて構成する、複数のサーバーのバックアップやデータ保管をまとめて行えるようにテープライブラリや専用のストレージシステムを使用するなど、より大規模な構成に対応可能な効率の良い構成を組むことが一般的です。それぞれの役割ごとにシステムを分けることで、高い性能の提供と増設時の拡張性や、メンテナンスを含めた管理性を高めます。
ここまでをまとめると、 タワー型は、設置場所の自由度が高く、サーバー筐体内の拡張性も高いのに対して、ラックマウント型は、ラック搭載用に筐体内部が高密度に設計されていて、限られた設置面積に高密度に構成でき、拡張性は、サーバー筐体とは別システムで構成することで高い性能と拡張性を提供します。

続いて、ラックマウント型サーバーには、一般的なラックマウント型の他に、ブレード型、高密度型と呼ばれる製品があります。一般的なラックマウント型は基本的に「1筐体 = 1サーバー」ですが、この後説明する製品は、「1筐体 = 複数サーバー搭載」が可能になっています。それぞれの特長をご説明します。

ブレード型


ブレードとは、サーバー1台1台をブレード(刀身)状に薄くし、プロセッサー、メモリ、ハードディスク、ネットワークアダプターを搭載したサーバーブレードと、エンクロージャーもしくはシャーシと呼ばれる専用の筐体に多数(HPEでは16台)搭載できるタイプのサーバーで、ラックマウント型よりもさらに高密度化が図られています。エンクロージャー(筐体)は、ラックマウント型と同様にラックキャビネットに設置します。エンクロージャーには、サーバー以外に電源、冷却ファン、専用のスイッチを搭載でき、サーバーとスイッチとの接続は、筐体内でケーブルレスでの構成ができるため、スッキリと整理されたシンプルな配線が可能です。その他にも、サーバー増設や、サーバーの入れ替えが簡単に行え、省電力やメンテナンス性、管理性に大変優れています。多くのサーバーを保有し、設置スペースや電力コストの削減、サーバーの一括管理を希望する場合に最適です。


高密度型 (Density Optimized)


高密度型は、ブレード型と同じように、シャーシと呼ばれる専用の筐体をラックに搭載し、そのシャーシ内に複数のサーバーを格納する形状の、最も新しく出てきた分類のサーバーです。シャーシをラックに搭載して電源とファンを複数台のサーバーで共有することで、省電力、高密度を実現します。シャーシ内に搭載されるサーバーは、サーバートレイやノードなどと呼ばれます。
一つの筐体に複数台のサーバーを格納する点はブレード型と同じですが、大きな違いは外部ネットワークとの接続の形態と管理性です。ブレード型は筐体内部に専用のネットワークスイッチを持ち、各ブレードはそのネットワークスイッチを経由して筐体の外のネットワークに接続します。ネットワーク部分を集約することで、複数ブレードをまとめたネットワークの仮想化や複数筐体の統合管理など、様々な高度な管理を実現することができます。一方、高密度型は各サーバートレイにネットワークケーブルを接続します。ネットワークの集約がないことで、各サーバートレイの独立性が高くなり、ラックサーバーと同じようなシンプルな管理を実現することができます。また、ブレード型は専用の便利な管理モジュールを搭載しているのに対して、高密度型は搭載していないので管理性にも大きな差があります。ブレード型はその高い管理性からサーバー仮想化環境などの大規模環境の統合管理に向いていますが、高密度型サーバーは、スケールアウトワークロードに最適なサーバーです。
スケールアウトとは、大量の処理を複数のサーバーで分散してシステム全体の処理能力を向上させることをいい、何十もしくは何百のラックマウント型サーバーを並べて実現されてきましたが、近年ではより省電力・省スペースを実現する高密度型サーバーが利用されることが多くなっています。
(ちなみに、サーバー台数を増やすのではなく、サーバー内部のコンポーネントを増強して性能をあげることをスケールアップと呼びます。拡張性が大きいタワー型やU数の多いラックマウント型などを使い用いられる手法です。)
スケールアウト手法が用いられる分野としては、製造業における解析・シミュレーション、学術系の計算処理といったHPC(High Performance Computing)やオンラインショッピング、動画配信サービス、SNS、オンラインゲームなどのWebサービス、 クラウドなどのデータセンターサービスといった分野で多く用いられています。


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