東日本大震災後の対応と流通BMS

「真に価値ある製品と真に価値あるサービスの提供」という企業理念のもと、日本全国に27拠点の生産工場と、約10万の店舗、そしてそれを結ぶ独自の配送システムを持つ山崎製パン様。

2011年3月11日の東日本大震災の際は、仙台工場をはじめ工場や店舗に大きな被害を受けました。さらに原料の調達、計画停電や物流障害と震災後の緊急事態が続く中、食品企業としての使命として被災地への緊急食糧支援を実施。

こうした事態に対応した受発注業務を一元管理するシステムと、震災後の対応について、山崎製パン様に伺いました。

 

5Sの業務改善と、ドラッカー5つの質問


── はじめに、2011年3月11日の東日本大震災の際、被災地への支援活動についてお教えください。

石毛 幾雄 氏:震災発生直後より、農林水産省および宮城県をはじめとする自治体からの支援要請を受け、グループ総力を挙げて緊急食糧供給活動を行いました。関東をはじめ中京、関西地域の各工場から供給し、毎日避難所に届けることができました。2011年11月の累計でパン類1,563万個、おにぎり807万個、菓子48万個を供給でき、当社に与えられた社会的責任を果したかと思います。

山崎製パン株式会社 計算センター 室長 石毛 幾雄 氏

山崎製パン株式会社 計算センター
室長 石毛 幾雄 氏

── 一方、工場や店舗など、多く被災を受けたのではないでしょうか?

石毛 幾雄 氏:ヤマザキグループ全体で、仙台工場をはじめとする東日本に所在する各工場が操業停止や設備の損壊、仙台エリア中心にデイリーヤマザキ40店舗が一時休店ととても大きな被害を受けました。震災後は、原材料の調達、計画停電、断水や物流障害、さらには大量発注と、まさに緊急事態の連続でした。

そうした中、部門別製品施策、営業施策を推進するとともに、「なぜなぜ改善」と「2本立ての5S」による業務改善に取り組み、内部管理体制の充実と業務の効率化を実施しました。その結果、調達可能な原材料を用いて、品種数を1,800品から164品へと大幅に絞り込み、部門ごとに緊急事態に即応する生産販売体制を敷き、被災地への食糧供給と通常製品の安定供給に対応したわけです。

── 食糧支援を使命と考える企業理念は、具体的にはどういったものなのでしょうか?

石毛 幾雄 氏:「良品廉価」「顧客本位」の精神を根本に、「企業経営を通じて社会の進展と文化の向上に寄与することを使命」とし、「常に良きものへ向かって絶えず進歩し続ける」ことを経営基本方針としています。そして、ドラッカー5つの質問※を取り入れて具体方針としているのです。

というのは、パン作りに必要なのは原材料と技術と、付加価値が多いわけではないのです。たとえば、プレザーブといった果実の原型が比較的保たれているジャムは、従来のものと比較するとあまり日持ちしません。そうした、こだわった原材料のために、原材料のための専用工場も設営しています。配送の仕組みも同様で、流通を自社で持つことでお客様と接する機会が得られ、それぞれのお客様にそれぞれの商品をお届けでき、かつ様々な事態でもフレッシュな状態で柔軟に配送を行うことができます。

※「われわれのミッションは何か、われわれの顧客は誰か、顧客にとっての価値は何か、われわれにとっての成果は何か、われわれの計画は何か」といった、経営ツールとして経営学者のピーター・ドラッカーが開発した評価法。

写真(1):輸送機への積み込み準備(航空自衛隊小牧基地)

写真(1):輸送機への積み込み準備(航空自衛隊小牧基地)

 

震災時に対応した受発注管理


── どれくらいの数の工場と店舗、そして商品の受発注管理を行われているのでしょうか?

石毛 幾雄 氏:2012年12月末現在で、国内に27箇所の工場と107,182の営業店舗があります。パンは約4,700種類、季節商品や地域限定の商品を含めて約10,500種類とバラエティ豊かな商品を取り扱っています。全国にパンの工場を配備し、効率的な生産ライン、万全の品質管理体制によって、最高の品質と最善のサービスに日々努めているわけです。

水野 徹 氏:毎日受注生産を行なってフレッシュな状態でお届けするというのは、他の製造業にはないビジネスモデルだと思います。パンは生鮮食品ですので、ストックするわけにはいきません。受発注管理システムには早く注文を集計して早く工場に振り分けるといった独自の仕組みで、かつ様々な課題に迅速に対応できることが重要となるのです。

山崎製パン株式会社 計算センター 次長 水野 徹 氏

山崎製パン株式会社 計算センター
次長 水野 徹 氏

図(1):受発注管理システム

図(1):受発注管理システム

── 東日本大震災の際、受発注管理においての緊急事態には、どういったことがあったのでしょうか?

石毛 幾雄 氏:操業停止した仙台工場は東北の多くの地域をカバーしていましたので、各地からの発注も多くありました。そこで、臨時で物流基地を設置し、他の工場で生産したものを集め、手作業で仕分けし、配分した実績を売り上げに計上するといった仕組みを作り、柔軟に対応したわけです。

また、パン以外の食品売場が品薄状態となり、各チェーンから予想していなかった大量発注が続きました。既に工場は、食糧支援を含めてフル稼働でしたので、生産能力を超えた状態でした。さらに、発注側から手作業などの様々な方法で注文が届いたり、納品確認も行えなかったりと、システムが機能しなくなってしまったのです。

写真(2):緊急食糧を輸送する配送車両

写真(2):緊急食糧を輸送する配送車両

水野 徹 氏:計画停電も大きな問題でした。パンの仕込みから出荷まで半日かかり、その間止まってしまうと、パンを製造できなくなってしまうのです。不定期に訪れた計画停電によって関東近郊の工場を中心に、より充実した管理体制と業務の効率化が求められました。

受発注管理システムとしては、システムそのものが計画停電の影響を受けることもありましたし、発注側のシステムが影響を受けることもあり、時間を合わせて継続的に集計処理を行うことが困難となりました。当時は流通BMSの導入が始まったばかりであり、弊社側で繰り返し発注データを取りに行く集信を行うことで、対応したわけです。受発注管理システムが計画停電の場合は大阪のバックアップから行いました。

※「流通ビジネスメッセージ標準 (Business Message Standards)」の略で、2007年に経済産業省により制定された流通事業者が利用する統一の標準仕様。

図(2):東日本大震災時の災害対策構成

図(2):東日本大震災時の災害対策構成

── 大阪のバックアップは、実際どうだったのでしょうか?

水野 徹 氏:災害対策システムを企画して作ってOKではなく、その場になってみないと動かないということがあります。当時、2時間停止した場合の訓練は行なっていました。計画停電の可能性があると分かった際、大阪をさらに長時間動かそうと考えたのですが、実際にはデータ量や運用面など様々な課題が生じたのです。

 

震災後の改善と流通BMSと、将来の流通像


── 震災後、システム面ではどのような改善を行ったのでしょうか?

水野 徹 氏:最も近々では、非常用発電設備の本格稼働を始めました。連続で2日間の自家発電が行えるものです。さらに、設備の増強、免震装置の設置も行いました。また、大阪の計算センターの立地環境を見直し、移設も行なっています。大阪も同様に、免震装置に非常用発電設備を完備しています。

石毛 幾雄 氏:さらに、当時の教訓からバックアップ業務・設備・方式の見直しを行いました。バックアップ対象業務を拡大し、設備も東京と同様にNonStopサーバーを設置してバックアップの訓練を行なえるように通信ソフトを改修しました。訓練は一週間単位で実施しています。

図(3):NonStopサーバーの災害対策

図(3):NonStopサーバーの災害対策

── 運用面ではどのような改善を行ったのでしょうか?

水野 徹 氏: 流通BMSを導入した新基幹システムを運用しており、その効果も、実際に現れていると思います。

クリスマス・シーズンはケーキなどの通常以外の特別受注データがあり、通常は40分の集信処理も2時間かかることもあります。そのため、例年工場は2時間遅れることを前提にして対応していたのですが、流通BMSでは10分ほどで完了できたのです。

流通BMSの場合、注文データをそのまま格納して即時的に参照ができ、バッチ主体の業務プロセスからリアルタイムのプロセスへとなるわけです。今後、運用上の課題を洗い出し、改善していかなくてはと考えています。

石毛 幾雄 氏:流通業は決まった時間に仕入れた商品を棚に並べ、一日の売上の集計をし、棚卸をして発注とするといった、いわゆるバッチ業務になっており、伝送手順がJCAから流通BMSに変わっただけなのが現状です。

今後、発注担当者が、リアルタイムに表示された端末と棚を見て発注したタイミングでデータを流す、といった業務改善によって、流通そのものがリアルタイムになっていく時代が訪れます。そうした次世代を見据え、牽引するのが新基幹システムの目指すところなのです。

写真(3):マシンルーム

写真(3):マシンルーム

── 最後に、次世代はどんな流通となるとお考えでしょうか?

水野 徹 氏:流通BMSによってリアルタイム化が進みますが、まだ様々な課題があると思います。たとえば、発注完了かどうかの判定がしにくく、現在のプロセスではどの時点で受注を締めていいのかが判断できないのです。そうした課題を解決していくことで、リアルタイムの流通になっていくと思います。

石毛 幾雄 氏:全部の受注が締まらないと生産開始できないのが現状ですが、リアルタイムになることで仕込みを1時間早く開始できるようになり、生産工程を改善していくことで、品質の向上が図れると思います。

さらには流通の全てがリアルタイムに繋がることで、業務を追うことなく、どんな形にも対応できるようになるわけです。現在は生産起点ですが、物流起点で生産することができるようになります。トラック満載で物流できればいいのですが、生産起点では満載になるのを待つことはできません。あるものは生産起点で、あるものは物流起点と自由に組み合わせて業務が機能するようなシステムを構築していきたいと思うのです。

── 本日は、ありがとうございました。

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山崎製パン株式会社

所在地:東京都千代田区岩本町3-10-1

URL:http://www.yamazakipan.co.jp/index.html 


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