一つの筐体内に数多くのコアを集約でき、メモリーも500GB以上を搭載可能なうえコストパフォーマンスにも優れたHP ProLiant DL980 G7を採用

「合金研究にコンピューターシミュレーションを導入する、と言葉ではいえますが、金属材料の研究手法としては発展途上。
特に私たちがターゲットとする、現実に構造材料として使用される実用合金材料は、きちんと原子が整列した単結晶ではなく、ミクロなスケールの構造からマクロなスケールの構造まで、複数の構造が多重的に混在しています。
こうした複雑な実用金属材料のシミュレーションは、まだまだ未知の世界。
これから手探りで一歩ずつ積み上げていく段階にあります。」

物質・材料研究機構
元素戦略材料センター 構造材料ユニット
組織設計グループ 主幹研究員
佐原亮二氏

 

複数の金属元素を組み合わせて作られる合金は、橋や建築物、自動車をはじめ幅広いものに構造材料として使われている。こうした実用金属材料は極めて複雑な多結晶構造をとっており、その特性の研究には実験・観察が中心的な手法として用いられてきた。物質・材料研究機構では、従来からのこうした手法に加え、量子力学などの理論をベースとしたコンピューターシミュレーションを新しい研究手法として確立するという意欲的な取り組みをスタートさせようとしている。実験データと合致する結果を導き出せる、マルチスケールをカバーするシミュレーション環境。その実現をHP ProLiant DL980 G7が支える。

業界

官公庁・研究機関

目的

  • ミクロからマクロの領域までをマルチスケールでカバーできるシミュレーション環境の構築

アプローチ

  • 多くのCPU、コアを1ノードに集約できる計算機を想定
  • メモリーもできるだけ多く搭載できることが条件
  • 高性能なインテル® Xeon® プロセッサー E7ファミリーを8基(64コア)搭載したHP ProLiant DL980 G7を採用

ITの効果

  • シミュレーション用プログラムのスムーズな開発が可能に
  • TOMBOをはじめとする多様なシミュレーションプログラムを一つの計算機上で実行可能
  • シミュレーション作業そのものの効率的な実行にも期待

ビジネスの効果

  • 合金研究にシミュレーションという新たな研究手法の導入を目指す
  • 元素戦略プロジェクトが目標とする希少金属の使用量削減に貢献する
 

日常の生活の中で幅広く使われている金属構造材料

高速道路や橋、建築物といった社会インフラから、航空機や船舶、自動車、機械をはじめとする工業製品まで、でき上がったものが容易には壊れない強度を保てるよう、金属をベースとする構造材料が幅広く利用されている。もちろん金属は、電気を流す導体、磁力を持つ磁石といった機能材料としても用いられているが、使用される量で比べると、構造材料が圧倒的に大きな比重を占めている。

国は、金属材料の特性向上のために添加されるレアメタルなどの希少金属の使用量を減らすため、全国の様々な研究機関と連携して「元素戦略」という大規模な国家プロジェクトを推進している。金属構造材料は使用される量が多い分、添加のために消費される希少金属の量も多く、構造材料用途での消費量を減らすことが希少金属全体の消費量削減にダイレクトに効いてくる。

物質・材料研究機構(NIMS)は、このような構造材料からのアプローチで元素戦略プロジェクトに参画している重要な研究機関の一つである。取り組みの中心的役割を担う同機構元素戦略材料センターの構造材料ユニットでは、希少金属を添加した金属材料を含む、いわゆる合金の研究を様々な角度から展開している。

合金の持つ複雑な組成やミクロな構造が、実際に使用されるメートルオーダーにおいて現れる強度や靭性(材料の粘りの強さ)といった巨視的な材料特性とどのように関係しているのか。同ユニットはその解明に挑むため、これまでの実験・観察に加え、計算機によるシミュレーションを新たな研究手法として導入する試みをスタートさせた。この最先端の研究のために、高性能なインテル® Xeon® プロセッサー E7ファミリーを8基(64コア)搭載したHP ProLiant DL980 G7が採用された。


独立行政法人 物質・材料研究機構
元素戦略材料センター 構造材料ユニット
組織設計グループ 主幹研究員
佐原 亮二 氏

独立行政法人
物質・材料研究機構
元素戦略材料センター
構造材料ユニット
組織設計グループ
主幹研究員
佐原 亮二 氏


実用合金材料のマルチスケールでのシミュレーションに挑む

「合金研究にコンピューターシミュレーションを導入する、と言葉ではいえますが、金属材料の研究手法としては発展途上にあります。特に私たちがターゲットとしている、現実に構造材料として使用される実用合金材料は、きちんと原子が整列した単結晶ではなく、ミクロなスケールの構造からマクロなスケールの構造まで、複数の構造が多重的に混在しています。こうした複雑な実用金属材料を対象にしたシミュレーションは、まだまだ未知の世界。これから手探りで一歩ずつ積み上げていく段階にあります」。研究を担当する同ユニット組織設計グループの佐原亮二氏は、取り組みの困難さをこう語る。

一般的に実用合金材料の構造の場合、ナノオーダーの最もミクロなスケールでは合金を構成する複数の金属原子が存在する。次のレベルとして、これらの金属原子が並んで結晶を形成。さらにその上の構造として、複数の結晶がランダムに集まって組織を形成するという多結晶構造をしている。さらに、各構造は、空孔などの点欠陥、転位などの線欠陥、結晶粒同士の境界に発生する結晶粒界などの面欠陥、といった結晶欠陥を内包している。シミュレーションで考慮すべき要素が極めて多いうえに、要素間の関係も複雑に絡み合っている。

「しかも私たちが最終的に目指したいのは、純粋に量子力学などの理論だけをベースにしたシミュレーションです。その際には、原子のナノオーダーからスタートし、実用のサイズであるメートルオーダーで現れる機械的強度などの特性を導き出す、つまりマルチスケールでのシミュレーションを実現する必要があります。しかし現状では、原子レベルのスケールであれば第一原理計算、その上のレベルではモンテカルロ法、最もマクロなレベルでは有限要素法といったように、スケールに応じてシミュレーション手法が分断されています。これらをいかに組み合わせて、マルチスケールを統一的にカバーするミュレーション環境を構築できるか。これは、世界的に見てもまだ取り組みが始まったばかりの、非常に挑戦的な研究テーマです」(佐原氏)。


 

1ノードに多くのCPUを集約できるほど第一原理計算では有利に

こうした研究のための具体的な作業として、佐原氏は、まずシミュレーションのための新たなプログラム開発からスタートさせることを構想。開発作業を効果的に進めるため、自分たちで占有できる計算機を導入したいと考えていた。計算機の要求仕様を検討する段階では、さらにその先の作業にも活用できる性能をあらかじめ確保しておくことにした。

佐原氏はこれまで、第一原理計算によるシミュレーションを、スーパーコンピューターと商用のソフトウェア『VASP(The Vienna Ab initio Simulation Package)』との組み合わせで実施してきた。一般に第一原理計算はフーリエ変換を使って解いていく。その際、データを複数に分割し、複数のCPUで計算させた後、いったん演算結果を1ヶ所に集約。またデータを分割して複数CPUで演算させるという処理を繰り返す。

「頻繁にノード間での通信が発生するため、演算に使用するCPUのノード数を増やしていくと通信がボトルネックとなり、処理の遅延が発生してしまいます。これを避けるため、処理性能の高いCPUをできるだけ多く1ノードに搭載可能な計算機を想定しました。搭載するCPU、コアの数に応じて、きちんとスケールすることも条件。もちろん、メモリーも潤沢に積める方が有利です」と、佐原氏は要求仕様検討の際のポイントを解説する。


■シミュレーション用プラットフォームの概要

シミュレーション用プラットフォームの概要

ハードウェア: HP ProLiant DL980 G7×1台
搭載プロセッサー: インテル® Xeon® プロセッサー E7-2830 8基/64コア
搭載メモリー: 512GB
搭載記憶領域: 900GB×4台
OS: Red Hat Enterprise Linux 6.4


スーパーコンピューターによるシミュレーションでも実験値と高い整合性を実現
従来型の規則相を用いた第一原理計算(DO3構造)と比べて、今回導入した固溶体モデル(X=0.1875, 0.25組成)で得られた結果は、実験を良く再現することが示された。

第一原理計算と硬X線光電子分光法による、β型Ti-Mo合金の価電子帯スペクトルの比較

大量のメモリーを搭載できる点でも優位だったHP ProLiant DL980 G7

「もう一つの思惑として、VASPがカバーしていない機能を利用できることから、第一原理計算用のアプリケーションとして、東北大学金属材料研究所で開発された『TOMBO(TOhoku Mixed Basis Orbitals ab initio simulation package)』を将来的に使用したい、ということがありました。TOMBOは全電子混合基底法という手法に基づいており、その特性として利用できるメモリー量は多い方が望ましいのです。できれば500GBぐらいの量を搭載したいと考えていました」(佐原氏)。

これらの条件をクリアーした計算機として選定されたのがHP ProLiant DL980 G7だった。 「最終的な決め手となったのは、HP ProLiant DL980 G7のコストパフォーマンスの高さ。他ベ ンダーの同スペックの計算機とも比較したのですが、512GBのメモリーを搭載できるマシン自 体が少なかったし、想定していた64コアを積んでもコスト的に大きな優位性がありました。ま た、TOMBOをHP ProLiant DL980 G7上ですでに使っている大学の研究室があるという稼働実績も、プラスアルファの安心感につながりました」と、佐原氏は振り返る。


 

実験データと合致する結果が得られるシミュレーション環境構築が目標

2014年の2月にNIMSに搬入されたHP ProLiant DL980 G7は、3月に入り徐々にテスト稼働をスタートさせている。

「本格的に使い始めるのはもう少し先になりますが、実機を触ってみて感じたのは、HPCに特化したスペックでありながら、意外と汎用性も高そうだということです」と、佐原氏はHP ProLiant DL980 G7に対する素直な印象を語る。
「この計算機の上で、第一原理計算をはじめとして、統計的な処理がベースとなるモンテカルロ法、さらには繰り込みといった多様なシミュレーション手法のプログラムを走らせることになります。また、よりマクロな領域のシミュレーション手法である有限要素法のプログラムを動かしたいという同僚研究者もいます。マルチスケールをカバーする統一的なシミュレーション環境を構築するという第1段階の研究テーマを達成するうえで、HP ProLiant DL980 G7が備える汎用性の高さには大いに期待しているところです」(佐原氏)。

本格稼働後に見えている最初の作業は、実用合金材料のシミュレーションにフィットするモンテカルロ法や繰り込みのプログラムを開発することだ。また、TOMBOをシミュレーション対象に合わせて最適化する作業も待っている。そして、数年後をめどにひととおりのシミュレーション環境を整備できるようにしたいと佐原氏は考えている。さらにその先には、第2段階の研究テーマが待っている。

「実際には、シミュレーション環境を整備し、シミュレーションの精度を高めていくという研究と並行することになるのでしょうが、第2の研究テーマとして見据えているのは、構築した環境でのシミュレーションを基に、これまでに発見されていない合金の特性を探り当てる、あるいは合金の特性そのものを設計する、ということ。元素周期表を眺めるとおよそ100ほどの元素があります。単純に組み合わせの数だけで考えれば、二つの元素からなる二元系の合金で1万種類、三元系であれば十数万種類にも及びます。これらの特性を実験で解明しようというのは現実的ではありません。こうした面でも、理論をベースにしたシミュレーションが研究の大きな武器となるでしょう。ただし、その前提として、実験で得られるデータと定量的に合致する結果が導き出せる、非常に精度の高いシミュレーション環境を作り上げておく必要があります。
壮大なチャレンジではありますが、HP ProLiant DL980 G7を効果的に活用して、着実に研究を進めていくつもりです」と、佐原氏は決意を込めて話を締めくくった。


 

会社概要

独立行政法人物質・材料研究機構

所在地:〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1

URL:http://www.nims.go.jp/index.html 


独立行政法人 物質・材料研究機構
本件でご紹介のHP製品・サービス

導入ハードウェア

  • HP ProLiant DL980 G7

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