HP Moonshot System/HP ProLiant m710サーバーカートリッジを採用し
福岡市全域の交通ネットワーク渋滞予測と最適ルート解析を高速に実現

「私たちの考える『都市OS』は、アプリケーションは自由に様々なものが開発でき、成長させることができます。福岡市が世界に先駆けて『都市OS』を実装して、実感できる成果をもたらし、世界中から注目される社会システムを実現するために研究を進めていきます」

−九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所
数学理論先進ソフトウェア開発室 室長
教授 博士(理学) 藤澤 克樹 氏

 

45ノードによる並列計算を4.3Uのスペースで実現

九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所の藤澤克樹教授を中心とするグループが、HP Moonshot SystemHP ProLiant m710サーバーカートリッジ×45)を利用して、グラフ解析を応用した「福岡市全域の交通ネットワーク渋滞予測」を行った。わずか4.3Uのスペースに、インテル® Iris™ Pro グラフィックス 5200を実装した高性能インテル® Xeon® プロセッサー E3-1200 v3 製品ファミリー搭載のサーバーカートリッジを45ノード超高密度に実装するHP Moonshot Systemは、点数約32万/枝数70万のグラフ解析処理を2分30秒で実行。九州大学が開発に取り組む「都市OS」の機能の1つ、都市交通制御の社会実装を大きく進展させる一歩を記した。

業界

教育・研究

目的

  • 九州大学が開発に取り組む「都市OS」機能の1つである、都市交通制御の社会実装に向けたビッグデータ解析。福岡市全域の道路、交通ネットワーク、ヒト、クルマ、気象環境などをデータ化し、HPCシステムを利用してグラフ解析や最適化計算を行い、実社会における最適な都市交通制御や災害時の避難誘導などを実現する。

アプローチ

  • 解析の目的と対象データの規模により「マクロ解析層」「中位解析層」「ミクロ解析層」に分類。それぞれに最適なHPCシステムを採用するとともに、最大のシステム性能を発揮させるためのアルゴリズムと解析アプリケーションを独自に開発する。

ITの効果

  • インテル® Iris™ Pro グラフィックス 5200を実装した高性能インテル® Xeon® プロセッサー E3-1200 v3 製品ファミリー搭載「HP ProLiant m710サーバーカートリッジ」を45ノード収容するHP Moonshot Systemを採用し中位解析層の並列計算システムを構築
  • 45サーバーノードによるクラスター環境を4.3Uの超高密度/約2,800W(平均)の超低消費電力で実現
  • 1Uサーバーとの比較で1/10以下の省スペース/1/8以下の低消費電力を実現
  • 1シャーシあたり1.44TBメモリ/21.6TBのSSDを搭載し高速な解析処理を実現

ビジネスの効果

  • 超高密度・超低消費電力サーバーながら点数約32万/枝数70万のグラフ解析処理を2分30秒で実行
  • 渋滞や気象の変化などに対応するタイムリーな解析処理により交通管制に必要な情報を提供可能に
  • 「都市OS」構想の1テーマである都市交通制御の社会実装に向けて大きく進展
  • 超高密度かつ超低消費電力のクラスター環境の実効性を確認し、他のテーマにも適用可能に
 

チャレンジ

都市交通の最適制御を実現するビッグデータ解析

九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所の藤澤克樹教授を中心とするグループが、超高密度・超低消費電力サーバー「HP Moonshot System」を利用して、グラフ解析を応用した「福岡市全域の交通ネットワーク渋滞予測」を行った。その結果、わずか4.3Uのスペースに、インテル® Iris™ Pro グラフィックス 5200を実装した高性能インテル® Xeon® プロセッサー E3-1200 v3 製品ファミリー搭載のサーバーカートリッジを45ノード実装する「HP Moonshot System」が、点数約32万/枝数70万のグラフ解析処理を2分30秒で実行して見せた。

九州大学 共進化社会システム創成拠点 COIプログラム プロジェクトリーダー 拠点長の是久洋一氏は、この解析を行った背景を次のように説明する。

「九州大学では、『共進化社会システムの創成』というテーマを掲げ、文部科学省が推進するセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムに参加しています。人口や環境の変化、エネルギー、自然災害、文化や制度など、私たちの暮らしを取り巻く世界には相容れない問題が数多く存在します。こうした様々な矛盾と向き合いながら、多様性の中で共生と進化を実現するための取り組みです。中でも、渋滞の解消や災害時の避難誘導など、都市交通を最適に制御する社会システムは重要テーマのひとつです」

九州大学COIプログラムでは、共進化社会システムを実社会において機能させる仕組みを「都市OS」と呼んでいる。社会デザインとマス・フォア・インダストリ(応用数学と純粋数学の融合による産業数学)を組み合わせた手法により、都市レベルでの最適なオペレーションを目指す。

「藤澤教授が行った解析は、『都市OS』の機能のひとつを明示するとともに、都市交通制御の社会実装に向けた大きな一歩を記したと言えるでしょう。具体的には、福岡市全域の道路において数分後、数時間後の渋滞予測を可能にするとともに、数年先の交通インフラの最適計画の策定も可能になるでしょう。悪天候や災害により、特定の道路や橋の通行が不可能になった際の最適な誘導などにも応用できます」(是久氏)

HP Moonshot System」による解析システムは、福岡市全域の道路、交通ネットワーク、ヒト、クルマ、気象情報など様々なデータを取り込んでグラフ解析・最適化計算を実行する。

「開発した技術を社会に実装し、運用し、メンテナンスするためには自治体や企業との緊密な協力が不可欠です。メディア配信やデジタルサイネージなどのインフラ整備とともに、交通制度の改正も必要になるでしょう。その産官学民の連携を担うのがCOIプログラムであり、私のミッションでもあります」と是久氏は話す。

九州大学
共進化社会システム創成拠点
COIプログラム 
プロジェクトリーダー
拠点長
是久 洋一 氏


九州大学
マス・フォア・インダストリ研究所
数学理論先進ソフトウェア開発室 室長
教授 博士(理学)
藤澤 克樹 氏

世界を驚かせたGraph500でのトップスコア

藤澤克樹教授が所属する九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所は、アジア初の産業数学研究所として2011年に創設された。革新的な未来技術の創出基盤となる数学研究は、産業分野をはじめ各界から大きな期待を集めている。

「私の専門はグラフ解析と最適化問題、そして高性能計算です。数学理論や定理をアルゴリズム化し、ソフトウェアとして実装すること、数理と情報を結びつけた研究により実社会に貢献することが、マス・フォア・インダストリ研究所における私のミッションです」と藤澤教授は語る。

藤澤教授は、グラフ理論に基づく大規模データ解析性能を競う「Graph500」(2014年6月発表)でトップスコアを叩き出して世界を驚かせた。現在、科学技術振興機構(JST)が主宰するCRESTと呼ばれる学術プログラムで「ペタスケールシステムにおける超大規模グラフ最適化基盤プロジェクト」の指揮も執る。

「大規模なグラフデータを複数の計算サーバーでどう保持するか、計算サーバー間の通信を削減するためにはどのような解析アルゴリズムが最適か、解析の目的ごとに最適なシステムアーキテクチャーをいかに確立するか。こうしたCRESTでの研究成果を、『都市OS』構想を実現する解析テクノロジーの開発にフィードバックしています」(藤澤教授)

いわゆる「ビッグデータ」が注目される現在、グラフ解析への期待も大きく高まっている。藤澤教授は、大規模データ解析にグラフ理論を応用するアプローチに1990年代から着目していたという。しかし、当時の計算システムはあまりにも非力だった。

「数理と情報を組み合わせた研究が本格化したのは2000年代後半からです。現在では、交通データに対する経路探索、ソーシャルネットワークに対する動的な影響度測定、サイバーセキュリティ、疾病の拡散予測、ライフラインの基盤計画など、グラフ解析の応用範囲は大きな広がりを見せています」

藤澤教授は、ビッグデータ解析におけるグラフ理論の優位性を次のように指摘する。

「グラフは点(ノード)と、点と点を結ぶ枝(エッジ)で表現されます。この極めてシンプルな構造が様々なメリットをもたらします。グラフ表現できる対象範囲が極めて広く応用分野を選ばないこと、重要度を損なうことなくデータ量を削減できるので膨大な一次データの格納と処理に適していること、巨大なデータ量でも計算処理しやすいことがあります。グラフ解析は、現代の並列計算システムのアーキテクチャーにもマッチしていると言えます」

 

ソリューション

HP Moonshot Systemによる超高密度の解析システム

では、実際に「福岡市全域の交通ネットワーク渋滞予測と最適ルート解析」を行ったシステムを紹介していこう。並列計算システムとして採用されたのは、インテル® Xeon® プロセッサー搭載「HP ProLiant m710サーバーカートリッジ」を45ノード収容する「HP Moonshot System」である。

「45サーバーノード/360コアによるクラスター環境を、わずか4.3Uのスペースに集約できることがHP Moonshot System最大の魅力です。システム全体の消費電力はおよそ2,800W(平均)で、家電製品並みの電力で動かせることに驚きました」と藤澤教授は話す。

HP Moonshot Systemは、同等のクラスターシステムを1Uサーバーで構築した時と比較すると「1/10以下の省スペース」「1/8以下の低消費電力」でこれを可能にする。手のひらに載るほど小さなサーバーカートリッジ「HP ProLiant m710」は、グラフィックスが統合されたインテル® Xeon® プロセッサー E3-1284L v3(1.8-3.2GHz/4コア)を採用。32GBメモリと480GB SSDを搭載し、1シャーシあたり最大1.44TBメモリと21.6TBの内蔵ストレージを実現する。

「点数約32万/枝数70万のグラフ解析処理を2分30秒で完了させた計算能力は、私の予想を超えるものでした。これは、15〜30分に1度センサーデータを収集して解析を行い、交通制御に必要なデータをデジタルサイネージに表示させるような実運用が可能なことを示しています。たとえば、特定の道路や橋の通行が不可能になったとき、現在運用されている道路交通情報システムでは事故情報を告知することしかできませんが、このシステムなら最適な誘導経路をタイムリーに導き出すことができるのです。局地的な解析であればリアルタイムに近づけることも可能です」と藤澤教授は自信を示す。

交通ネットワーク全体の視点から見ると、さらにユニークな応用も可能だという。

「小さな渋滞を意図的につくることで、幹線道で頻発している大渋滞を解消することもできるでしょう。全体最適化を指向した場合、ドライバーがある交差点で小さな渋滞に遭遇しても、結果として最短時間で目的地に到達できるような誘導が可能になるのです」(藤澤教授)

 

ベネフィット

小規模なチームが手軽に利用できる並列計算システム

藤澤教授は、グラフ解析の規模や目的に応じて、計算システムを合理的に使い分けることを提案している。データ収集からシステム上での解析、解析結果を実社会の制御に活用するまでの「時間軸」を横方向に示し、縦方向に「目的軸」を用意して3階層に整理した図を示しながら、藤澤教授は次のように説明する。

「上から、交通網や都市計画などの長期的な施策に利用する『マクロ解析層』、渋滞の解消など中期的な交通管制に応用できる『中位解析層』、そして災害時の避難誘導など即時性が求められる『ミクロ解析層』です。それぞれ、扱うデータの大きさや計算に求められるリードタイムが異なりますので、それぞれの特性に応じた計算リソースやテクノロジーを採用すべきです。すべてを巨大なスーパーコンピューターで実行する必要はありません」

いわゆるスパコンから、スケールアップ型サーバー、GPUを使ったスケールアウト型システム、Hadoopクラスターまで、データ解析を行うためのシステムには多様な選択肢が登場している。藤澤教授が、「HP Moonshot Systemは中位解析層に最適」と評価する理由はどこにあるのだろうか。

「中位解析層に求められる計算リソースを提供でき、わずか4.3Uのサイズに凝縮していることがやはり大きいですね。1Uサーバーではラック2本が必要ですから。また、大容量のSSDを搭載していますので、その一部をメモリ領域として利用する工夫もできました。業界標準のx86サーバーであり、コンパイラやライブラリーなど既存の資産を有効に利用できることもメリットです。サーバーとしての総合力で他を大きく上回っていたと思います」

藤澤教授は、東京工業大学のスーパーコンピューター「TSUBAME」などHPのサーバー製品を利用する機会が多く「HP Moonshot Systemには、HPのハードウェアテクノロジーへの情熱と探究心を感じた」という。

「システムアーキテクチャーの特性を理解し、最適なアルゴリズムとアプリケーションを開発してそのシステムの最大性能を発揮させることこそが重要で、私たちの力量の見せどころでもあります」―藤澤教授

「都市OS」の社会実装、そして持続的成長が可能な社会の実現へ

九州大学COIプログラムでは、情報通信技術の進化を前提として社会制度やシステムを再設計することを提唱している。そして、持続的成長が可能な社会を支える基盤として「都市OS」を位置づけている。要素技術開発3年、実証実験3年、社会実装のために3年――「結果」を求められるプロジェクトは、2017年から実証実験に入る。是久氏は次のように話す。

「開発された『都市OS』が都市インフラに結合されて正しく機能し、暮らしを支えるまでに育てていかなければなりません。藤澤教授には、様々なセンサーやデバイスからのビッグデータを解析するだけでなく、社会システムとして実効性の高いIoT(Internet of Things)環境を育て上げること、技術に魂を吹き込んでもらうことを期待しています」

最後に、藤澤教授が次のように抱負を語って締めくくった。

「私たちの考える『都市OS』は、特定の技術や製品を使うことを前提に、画一的な価値観に押し込められた都市構想ではありません。OSですから、アプリケーションは自由に様々なものが開発でき、成長させることができます。福岡市が世界に先駆けて『都市OS』を実装して、実感できる成果をもたらし、世界中から注目される社会システムを実現するために研究を進めていきます」

 

会社概要

九州大学

URL:http://www.kyushu-u.ac.jp/ 


九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所

URL:http://www.imi.kyushu-u.ac.jp/ 


九州大学共進化社会システム創成拠点

URL:http://coi.kyushu-u.ac.jp/ 

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