スケールアウト・サーバー製品部
阿部敬則氏

日本ヒューレット・パッカード創立50周年記念イベントで新たなサーバー時代の幕開けを告げた「HPE Moonshot System」 の発表から3年、導入事例・用途とも拡大し、着実に実績を重ねるHPE Moonshotに新しいカートリッジがラインナップに加わった。
今回、HPE Moonshotが成長する背景と新カートリッジの特徴を日本ヒューレット・パッカード スケールアウト・サーバー製品部の阿部敬則氏に話を聞いた。

HPE Moonshot(以下Moonshot) は、ターゲットとするアプリケーション(ワークロードや処理)に最適なスペックを提供するのと同時に、異次元の省スペース・省電力を実現するサーバーという新しいコンセプトの製品である。リリースから3年を経過した現在、阿部氏によれば、新コンセプトの理解が進み、異業種・異なるワークロードでの導入が増えているという。


その中でも、Moonshot Systemを導入する顧客のおよそ7割は、ワークスタイル変革を目指して、HDI(Hosted Desktop Infrastructure、詳細は後述)などのクライアント統合を用途に導入が拡大していることが特徴だという。


この背景には、「企業を取り巻く外部環境がますます厳しさを増し、生産性の向上、ワークライフバランスの改善に加えて、昨今はセキュリティへの取り組みは焦眉の急がある」(阿部氏) からだという。


実際、調査会社IDC Japanによれば、ワークスタイル変革の実施状況は、30%近くの企業で既に実施中であり、”必要性あり”含め50%を占める状況になっている。


この動きを後押しするように、総務省では”テレワーク導入企業数を3倍に””全労働者の10%以上をテレワーカーに”“女性就業率の向上” といったように、テレワークの普及に取り組んでいる状況 (総務省「世界最先端IT国家創造宣言」平成25年6月) だ。


そこで、近年導入が急速に進んでいるソリューションが、クライアント仮想化(VDI)である。VDIは、ネットワークが利用できればいつでもどこからでも社内デスクトップ環境にアクセスできる便利さを持ちつつ、サーバー上でのみデータ管理をすることで、端末紛失時のデータ漏えいリスクを解消し、管理工数を削減するといった多くの利点がある。


しかし一方で、阿部氏は、「VDI導入済みの企業では、パフォーマンスやアプリケーション互換性などの課題も見えてきています」と問題点を指摘する。


そこで、HPEが提唱しているのがHDI(Hosted Desktop Infrastructure)である。

HDIは、ハードウェアリソースを「共有」する仮想化技術を使用せず、ハードウェアを「占有」 するソリューションである。HDIは、VDIと同様にPCリソースをリモートで提供する一方、1人のユーザーが、物理リソース、OS、アプリケーションまでを完全に占有できる。


「HDIは、VDIの発展型ソリューションであり、今までのVDIの課題を解決します。まさにこれからのワークスペースのためのテクノロジーと考えています。 HDIによって、重いPDFファイルやPowerPoint ファイルなどをスクロールしたり、動画などのマルチメディアファイルをスムーズに表示することが可能です。


さらに使用が制限されていた各種OSの便利な機能を十分に活用することができ、VDIが直面している性能問題を解決します。もちろん、1人1台を占有できるわけですから、アプリケーションの互換性は問題ありません」(阿部氏)


阿部氏は、HDIソリューション導入事例として代表的な2社の事例を紹介する。


1社は、パナソニックインフォメーションシステムズの事例だ。
http://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ITP/16/hp0428/ 
同社はワークスタイル変革への取り組みを目標にして、働き方をより柔軟な形に変え、社員のモチベーションとビジネスの生産性を高め、ワークライフバランスの適正化を図っているという。


あと1社は、山陰総合リースの事例である。
http://h50146.www5.hpe.com/products/servers/news/casestudy/gogin-lease/
同社は、HDIを利用しインターネット分離を実現することで、利便性を損なわずに、セキュリティを確保している。同社ではMoonshotのボックス内に社内業務用/社外アクセス用のリモートデスクトップサービスを統合し、1台のシンクライアント端末から2つのデスクトップ環境を利用可能とし、システム環境の複雑化を抑制しながら、使い慣れた運用管理方法を利用できるようにしている。


特にHDIは、インターネット分離を求める総務省からの通達もあり、特に公共系のお客様で導入が進んでいるそうだ。


「総務省が勧めるインターネット分離では、地方公共団体を相互に接続する行政専用のネットワークである総合行政ネットワーク(LGWAN)を活用する業務用システムと、Web閲覧やインターネットメールなどのシステムとの通信経路を分割する実現する必要があります。
そのため、2つのPC環境を1つの端末で提供しなければなりません。さらに、ウィルス対策、改ざん検知などの必要とされるセキュリティーソフトが多くあり、事務OA用途でも高性能が求められる状況です。もちろん、VDIを導入する場合、一斉にログインをすると時間がかかりすぎ実用に耐えられません。そのため、これらの課題を解決するソリューションとしてHDIが選ばれているのです」と阿部氏。


このような背景の中、今回新しくインテル® Xeon® E3 “Skylake-H”搭載のm710x サーバーカートリッジ、インテル® Xeon® D “Broadwell-DE” 搭載のm510 サーバーカートリッジが新たにラインナップに加わった。


阿部氏は、「お客様・パートナー様より、さらなるCPU性能の向上や、メモリやSSDの大容量化という要望をいただいていました。用途としてCADに利用したいといった希望もいただいていました。さらに、運用・管理面においても、高い実績を誇るProLiantシリーズと同様の仕組みを提供も求められていました」と製品開発の背景を話す。


発表されたProLiant m710xは、クアッドコアの“Skylake-H”Xeon E3-1585L v5/3.0GHz CPUを搭載したHDI向けカートリッジ。m710xカートリッジの内蔵メモリは最大64GB、内蔵ストレージは最大4TB。税抜価格は46万7000円から。


「当社のベンチマークテストでは、m710xの性能は、初代サーバーカートリッジに比較して、1166%、従来モデル(m710p)比でおよそ120%向上しています。Iris Pro P580 GPU(72演算ユニット)を内蔵していますから、従来モデルのカートリッジよりも高いグラフィックス性能を発揮可能です。そのため、建設/建築業界での“エントリーCAD”領域のほか、高精細画像を扱う医療業界、トレーダーがマルチスクリーン表示を必要とする金融業界などをカバーできます」と阿部氏は、新製品に自信を示す。


従来Moonshotが提供するHDIは、定型業務を行うタスクワーカーや事務作業を行う一般OA作業向けのVDIと、GPUパワーをフルに利用するCAD/CAEエンジニアのようなヘビーユーザー向けリモートワークステーションの間を埋める、一般ビジネスワーカー向けのクライアントソリューションであった。今回のm710xカートリッジにより、パワーユーザーに向けても提案が可能となり、Moonshot SystemのHDIソリューションがカバーする領域を拡大したということだ。


従来からの1カートリッジ4ノードをもつHDIカートリッジであるm700サーバーカートリッジも更に性能強化をした後継機種のリリースが近々予定されている。m700、用途にあわせて、パートナーは提案して欲しい。


もう1つの新カートリッジProLiant m510 は、16コアのXeon D-1587/1.7GHz、または8コアのXeon D-1548/2.0GHzを搭載し、最大メモリ容量は128GB、最大ストレージ容量2TBと高性能・高容量を実現した(GPUは非搭載)。税抜価格は54万円からとなっている。


m510は、グラフィック能力を必要とせず、より高いCPU性能や大容量メモリ、SSDなどが求められるインメモリデータベースや「Hadoop」などのビッグデータなどに最適な製品である。


これらの新カートリッジは、Moonshotシリーズで初めて、ProLiantで実績のあるiLO4を搭載し、リモートコンソール・仮想メディア機能を提供することが可能だ。ProLiantのiLo4の扱いに慣れたパートナーにとっても、新しくエンジニアの教育が必要にならないことも朗報だろう。


これらの新カートリッジにより、Moonshotはさらに広くさまざまなワークロードに利用できることになった。特に、HDIは他社と差別化が可能であるだけでなく、「VDIと違ってパフォーマンスやアプリケーション互換性を気にする必要がないため、パートナー様にとっても非常に手離れがいいソリューションとなっている」(阿部氏)とのことである。


最後に、パートナーへのメッセージを聞いた。


「パートナー様との協業の結果、Moonshotの売上は年率二倍成長を続けています。Moonshotを中核にしたソリューション展開を可能なパートナー様であるMoonshot Venture Partnership(MVP)も4年目に入り合計19社となり、各MVPパートナー様には非常に積極的にMoonshot/HDIソリューションを推進し、実績をどんどん増やして頂いています。今後も進化をし続けるMoonshotによるパートナー様との協業をより一層進めてまいります。


HPE大島本社にはMoonshotだけでなく、Apolloシリーズなどスケールアウトに特化した製品の検証施設を開設しています。お客様・パートナー様が所持されるソフトウェアや使用予定のアプリケーションを実環境で、他のHPEサーバーやネットワークと一緒に検証可能です。Moonshot専任のエキスパートチームによる支援も可能ですので、ぜひご活用いただきたいと思います。」

パートナーにとっても、Moonshotの導入事例が増え、活用シーン、提案パターンをイメージしやすくなっただろう。ぜひパートナーには商材として検討し、ビジネスを拡大して欲しい。


[HPE パートナーニュースフラッシュ 2016年8月24日号 特集記事]
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