都市開発事業とIT:六本木ヒルズでのユビキタス環境作り
最先端の都市空間を提供することにより、総合ディベロッパーとして圧倒的なブランドを構築しトップを走り続けてきた森ビル。その成功要因のひとつとして、日本の流行文化発信地“トーキョー”の変化を常に先行してとらえ、
いち早くにそれらを取り入れてきたという「ソフト面」でのマーケティング・エクセレンスがあることは明確だ。複合施設には、そもそも目的の異なる多くの人が1つの場所に集まる。目的が異なれば必要とする情報も異なる。この視点からいかに顧客サービスを提供するかという課題があった。
森ビルは、顧客のニーズを読み、常に新しい付加価値を提供し、「街」として進化・発展していくための「ビジネス・インフラ」としてITを活用している。職・住・遊・学などさまざまな都市機能を内包した六本木ヒルズ(=多様なライフシーンが混在する街)では、
ユビキタス環境を実現することでサービス提供側とそれを受ける人々の距離を縮めることができる。
六本木ヒルズではe!(イービックリ)プロジェクトなど、すでにユビキタスに関する実証実験を行っている。認証デバイスとしてICカードやRFIDタグを利用した最先端のもので、
具体的には、ICカード・発信型RFIDタグが利用場面に応じて別の機能を提供するハイブリッド型メンバーシップカードサービスや、RFIDタグと位置情報を組み合わせて利用者のいる場所に即したプッシュ型情報提供を行うワイヤレス・タウン情報サービスなどが行われた。この一連の実証実験や森ビルグループでの
ITを利用した利便性提供の中心的役割を担っているのが、イーヒルズ株式会社である。同社は、会員制情報提供ポータル「eHills
Club」の運営やテナントと森ビル向けに共同マーケティングの方法を提供している。
「テナントのお客様の顔は見えています。しかし、ショップなどへの来街者は不特定多数のお客様となり、把握することが難しい。それを六本木ヒルズ専用のメンバーシップICカードを導入し、データを日々蓄積することで、テナント様と来街者、六本木ヒルズの間で顔の見える関係を構築できるようになります。
テナント様にとっては、自店舗で行う顧客管理より広い六本木ヒルズ全体のデータを活用したマーチャンダイジングができる可能性があります」
激変する時代のニーズを常に先取りし、適応し進化し続ける「付加価値提供」型の姿勢が、現在の森ビルの業界での位置を確固たるものにしているといえる。
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